ご存じですか?
今 一人の日本人が造るワインが
世界各地で人気を博している事を。
例えばこの 開店から半年で
「星」を獲得した パリの人気レストラン。
ワインにうるさいパリっ子が
そのワインを絶賛する。
その男が生きるのは ワインの聖地…
日本を離れて 23年。
異国での闘いを励ますのは
ブルーハーツの あの名曲。
♪♪~(「リンダ リンダ」)
フフフフフッ!
♪♪~
日本人らしい地道でまじめなワイン造りが→
世界の舞台で花開いた。
そのワインは 本場フランスの巨匠たちをも うならせる。
♪♪~(主題歌)
ほとんどの畑が世襲されるブルゴーニュにおいて→
個人で畑を手に入れた日本人は
仲田ただ一人。
日本人が簡単に認められるほど
甘い世界ではなかった。
一つの出会いが
仲田の運命を変えた。
すべての努力を 一瞬で
奪い去っていく 自然の猛威。
夫婦ゲンカが 勃発した。
日本を飛び出し ワイン造りに人生をささげた男の 物語。
ワインの聖地 フランス ブルゴーニュ地方。
その中でも 品質の高いブドウが最も多くとれ→
あのナポレオンが愛した
ジュヴレ・シャンベルタン村。
ここに 仲田晃司の
小さなワイナリーはある。
この地に移り住んだのは
23歳の時。
家族は フランスで出会った…
恥ずかしがり屋の…
朝の日課は 世界中のワイン業者から
寄せられる 注文のチェック。
仲田は今 世界的な注目を集める
ワイン醸造家だ。
そのワインは 繊細かつ 優雅。
こだわり抜き 磨き上げた→
日本人らしい
「職人のワイン」と評される。
ワイナリーとしては小規模だが
22か国に輸出され→
星付きレストラン 30軒以上で
飲まれている。
ブルゴーニュでも 最も高い評価を受ける
醸造家の一人 エマニュエル・ルジェも→
仲田のためならと
取材を受けてくれた。
何のつてもなく
ブルゴーニュに単身乗り込み→
ここまで成功を収めた日本人は
いまだかつていない。
その「奇跡」とも言える歩みを
可能にしたのは→
妥協を許さない
醸造家としての姿勢にある。
この日 出向いたのは→
ブドウの買い付けを予定している農家の畑。
ブドウの出来は 悪くなさそうだ。
だが しきりに地面を観察し始めた。
ワイン造りを貫く 流儀がある。
ワインは 造り手を映し出す 鏡。
たとえ僅かでも手を抜けば→
それが そのまま味に出ると仲田は考える。
傷ついたブドウを取り除く
「選果」でも→
仲田は 驚くほど
厳しい姿勢で臨む。
こだわって買い付けたブドウですら
2割をはじく。
ワインのできる量が減るため→
ここまで徹底する醸造家は珍しいという。
そして ここからが 仲田の真骨頂。
ワインの出来を決定づける「醸造」だ。
ほとんどのワイナリーが 機械や道具を
用いて ブドウを混ぜる中→
仲田は極力 手にこだわる。
種や皮が傷つき雑味が出るのを防ぐためだ。
多くの醸造家が多用する添加物は
酸化防止剤を除いて用いない。
発酵は ブドウに含まれる 天然の
酵母だけで行うこだわりようだ。
(発酵する音)
ワインを語る時 仲田はこの上なく 幸せな顔になる。
一般に ワインの樽熟成は
1年から1年半がメドとされる。
だが 子ぼんのうの仲田は→
長い時には2年じっくり寝かせる。
ちょっと ワインが硬いので。
2,000年の歴史を持つブルゴーニュのワイン。
南北230キロにわたって
ブドウ畑が延々と続く。
一見 同じブドウ畑に見えるが
4段階に格付けされている。
格は 地層や水はけ 日当たりなど
細かな条件によって決まる。
例えば ここは
最上級に格付けされる「グラン・クリュ」。
ブドウ畑全体の1%しか存在しない
極上の畑だ。
1本100万円を超える事もある
超高級ワイン 「ロマネ・コンティ」は→
ここで造られる。
だが 道一本隔てただけで畑の格付けは変わり→
ワインの売値は ガタ落ちする。
畑は代々 世襲されるためフランスでも特に閉鎖的で→
よそ者が受け入れられにくい
土地とされる。
それでも 仲田さんが
農家から ブドウを買い付け→
ワインを造る事ができるのは
日々のたゆまぬ努力によるものだ。
例えば この日
仲田さんが開いたテニス大会。
地元の人 300人が参加した。
優勝者に贈られたのは トロフィーと仲田さんが造った最高級のワイン。
(笑い声)
日本を発ったのは 23歳の時。
人生の半分を ここ
ブルゴーニュで過ごしてきた。
普通なら 笑っていられないような
苦労も たくさんあった。
そんな時 言い聞かせる
魔法の言葉がある。
仲田には 夢があった。
それは ブルゴーニュで畑を持ち有機栽培でブドウを育て→
どこにもないワインを造る事。
その夢の扉が開いたのは 6年前。
引退する農家が 仲田ならと
畑を譲ってくれたのだ。
だが そこは
最も低い格付けの畑だった。
しかも 植えられていたブドウは→
「アリゴテ」という格安ワインにしかならない品種。
酸味が強烈だ。
しかも 樹齢110年の老木。
多くの収穫は望めないため
植え替えるのが常識だが→
仲田は この木を抜かなかった。
♪♪~
7月14日 フランス革命記念日。
この日ばかりは誰もが仕事を休む。
だが 仲田の姿は
アリゴテの畑にあった。
今シーズン 仲田は 老木のアリゴテに
大胆な手術を施した。
枝を土に埋め 新しい根を張らせる
「マルコタージュ」という方法。
少しでも多く 養分を
吸収できるようにするためだ。
だが 問題があった。
土に埋めた枝は傷つきやすいため→
トラクターで雑草を取る事が
できなくなるのだ。
畑は格下 ブドウは老木。
だが 手をかけさえすればむしろ老木の方が→
小粒でも養分を凝縮させた
極上の果実を実らせるはずだ。
収穫の季節を迎えた。
アリゴテは 仲田に応え過去最高の豊作となった。
収穫を半分近くまで
終えた時だった。
ブドウの半分は
1週間 収穫を遅らせ→
なんと2種類のワインを造るという。
遅く収穫するブドウには芳醇な甘さが加わる。
早く収穫するブドウの
爽やかな酸味と混ぜて→
理想のワインを追求するという。
だが かかる手間は倍になる。
ワイン醸造の専門家も
驚きを隠せなかった。
3週間後。
このワインが完成するのは 2年後だ。
♪♪~
アリゴテで造る仲田さんのワイン。一体 どんな味なのか。
人気ワイン漫画 「神の雫」の世界で
疑似体験してみよう。
主人公の天才テイスター 神咲 雫は
ワインを独特な感性で表現する。
原作を手がけるのは→
フランス政府から表彰されるほどワインへの造詣が深い 樹林さん姉弟。
仲田さんのアリゴテ。
どう表現するのか。
♪♪~
仲田さんの楽しみは家族全員で買う宝くじ。
でも 一度も当たった事はない。
まあな…
(笑い声)
笑顔の絶えない 幸せなひととき。
でも この団らんに
たどりつくまでには→
長く苦しい日々があった。
仲田さんは 美しい山々に囲まれた岡山県高梁市に生まれた。
オクテで シャイだけど
いつも笑顔を絶やさない男の子。
ワインと出会ったのは 18歳の時。
バイト先のシェフが 社員旅行でパリに連れていってくれた。
レストランで目にした光景に
強く心を奪われた。
仲田さんは ワインの産地を訪ね
一から学び始めた。
そんな時 人生を揺るがす
一大事が起きる。
友人の連帯保証人になっていた
父親が→
8,000万円の借金を背負い
破産した。
両親は離婚。
笑顔が絶えなかった家庭は一瞬で壊れた。
仲田さんは その当時の事を
多く語ろうとはしない。
だけど 一つだけ
決めた事があるという。
前を向いた仲田さんに見えたのは
ワインだった。
23歳 ワイン造りの最高峰 ブルゴーニュに
単身飛び込んだ。
でも 皆 警戒心が強く→
会ってくれないばかりか嫌がらせも受けた。
でも 仲田さんは めげない。
持ち前の明るさが受け入れられ→
取り引きしてくれる農家は
徐々に増えた。
でも そこからが
本当の地獄だった。
ワイナリーの立ち上げで抱えた
1,000万円の借金。
早く返したいと
流行のワインをまねて造った。
ところが添加物で味を造ったワインは
さっぱり売れなかった。
倉庫には 売れ残ったワインが
積み重なり 早くも倒産の危機。
家族を養うため
観光ガイドのアルバイトをしたが→
苦しい生活から抜け出せない。
家族には 明るく振る舞いながら途方に暮れた。
気付けば あるワイン醸造家を
約束もなしに訪ねていた。
「ブルゴーニュの神様」と言われた
醸造家 アンリ・ジャイエ。
仲田さんは 聞いた。
「どうしたら売れるワインが造れますか?」。
すると 神様は笑顔で問うてきた。
「流行にとらわれていないか。→
本当に 自分がおいしいと
思うものを造っているか?」。
自分がおいしいと思うワインとは
何か?
添加物を使わず→
ブドウ本来の味わいが感じられるワインを造ろうと決めた。
手を加えないワインは
「薄い」と けなされる事もあった。
でも 笑って 前を向き続けた。
誠実に造ったワインはじわじわと評価を得ていった。
ブルゴーニュに飛び込んで 23年。
仲田さんの笑顔はこの地の隅々に広がりつつある。
この日やって来たのは あの
テニス大会で優勝したステファンさんの家。
なんと 以前 ブドウ畑だった土地を
貸してくれるという。
賃貸料は不要。
お礼は ワインでいいという。
今は荒れ放題だが 手入れをすれば
極上のブドウが きっととれる。
少しずつ でも 着実に。
仲田さんの夢は 膨らみ続ける。
それは ブドウの実が膨らみ始めた
7月初めの事だった。
仲田は
不吉な予感に襲われていた。
恐れていたのは 雹。
ブドウが傷つく。
(風の音)
(激しい雨の音)
小さい雹が 混じり始めた。
嵐は 30分ほどで過ぎ去った。
仲田に 笑顔が戻った。
だが この時 畑では思いもよらない事態が起きていた。
翌朝。
マルサネ村にある畑で雹でブドウが傷ついているという。
長年 有機栽培に取り組んできた
農家が 引退を機に→
仲田を見込んで託した畑。
この畑のブドウで 赤ワインを造る事を仲田は楽しみにしていた。
ブドウは傷つき
腐り始めているものもあった。
4日後 仲田は見慣れないトラクターで
畑に向かった。
立ち寄ったのは 友人パトリックのもと。
ワイン造りの先輩で有機栽培の先生でもある。
取り出したのは
「タルク」という石を砕いた粉。
雹の傷口を乾燥させ
腐るのを防ぐ。
有機栽培で使用が認められた粉で
収穫までには消える。
♪♪~
時間を見つけては マルサネの畑に通う仲田の姿があった。
どんな小さな変化も 見逃さない。
♪♪~
優しいまなざしを 向け続ける。
♪♪~
待ちに待った 収穫の季節。
マルサネのブドウは 雹にも負けず見事に実った。
ワインの出来を決定づける
「糖度」はどうか。
糖度は 申し分ない。
いつ収穫してもよさそうだ。
しかし 気がかりな事があった。
赤ワインはブドウを丸ごと発酵させるため→
種が未熟だと雑味が混じる。
種が完熟するまであと1週間は待ちたい。
だが 5日後からは雨の予報。
カビが生えて 腐る危険がある。
この日 仲田は
決断を下せなかった。
明くる日。
夫婦ゲンカが 勃発した。
仲田は 種の熟し具合に
かたくなに こだわっていた。
だが 妻のジェファさんは→
雨が降る前に早く収穫した方がいいという。
少しでも良い状態で
収穫してあげたい。
仲田は まだ判断を下せない。
翌日も 仲田の姿は畑にあった。
そして 意を決したように
語りだした。
え~っとですね…
あした ブドウを摘み取り赤ワインではなくロゼワインを造るという。
ロゼは 赤ワインと異なり 種を除いて
発酵させるため 雑味が出ない。
だが ロゼは売値が安くなる。
それでも このブドウを最大限に生かせるのは ロゼだと考えた。
翌日 マルサネの収穫が始まった。
種からえぐみが出ないように優しく ブドウを搾っていく。
収穫から 4日後。
あとは 大事に育ててきたブドウを信じて待つ。
2週間後。 ワインの出来を占う
テイスティングの時が来た。
妻のジェファさんと 味を見る。
2018/01/08(月) 22:00〜22:50
NHK総合1・大阪
プロフェッショナル 仕事の流儀「ワイン醸造家・仲田晃司」[解][字]
ワインの聖地、ブルゴーニュに飛び込んで23年。ワイン醸造家として注目を集める仲田晃司に密着。「極上の一滴」を生み出すための驚きの哲学。ワイン漫画「神の雫」も!
詳細情報
番組内容
ワインの聖地、ブルゴーニュに飛び込んで23年。ワイン醸造家として注目を集める仲田晃司に密着。「極上の一滴」を生み出すための驚きの哲学。悪天候でブドウの収穫量の減少が続く中、今年も「ヒョウ」が畑を襲った。傷だらけになったブドウを慈しむ仲田。3か月の取材で見えたのは、逆境でも常に前向きに、ワインと向き合う誠実な生き様だった。人気ワイン漫画「神の雫」も登場!これを見れば、ワインが100倍面白くなる!?
出演者
【出演】ワイン醸造家…仲田晃司,【語り】橋本さとし,貫地谷しほり
ジャンル :
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