♪♪~
深夜零時。
仕事を終えた一人の女がふらり 街へと繰り出す。
高級クラブのママ…
二十歳でホステスになって32年→
この世界を生き抜いてきた。
切った張ったの 闘いの街。
それでも
銀座を愛し続ける理由がある。
♪♪「今日の日はさようなら」
♪♪「またあう日まで」
今夜は
銀座に生きる女たちの物語。
夕方6時。
家路を急ぐ人波であふれる頃…。
高級クラブのママ 白坂亜紀の
仕込みが始まる。
店に来るのは
一流企業のトップをはじめ→
世の中を知り尽くした男たち。
彼らと向き合うには 政治や経済ゴシップに至るまで→
あらゆる知識が欠かせない。
もう一つ大切な仕込みがあるという。
立ち寄ったのは
なじみのワインバー。
ここで決まって 酒を何杯か。
意外にも白坂は人見知り。
4杯あけて スイッチを入れた。
店は 多くのクラブがひしめく銀座7丁目。
報告事項なければ…
ホステスは30人弱。
ここで働く動機は さまざまだ。
夜8時の開店とともに 席があっという間に埋まっていく。
料金は席料だけで
一人 2万5,000円。
シャンパンなどを注文すれば
更に数万円。
驚くような額だが
店は連日 満員だ。
客が求めるのは やはり艶。
さりげないボディータッチ。
更に 巧みな話術で
男心をくすぐる。
だが白坂は
女を武器にするだけではない。
その頭には顧客数千人の個人情報。
生年月日は言わずもがな。
家庭の事情から 女性の好みまで。
刹那に記憶を引き出す。
常に心に置く流儀がある。
銀座は今も昔もビジネスマンの社交の場。
白坂は 客にとって有益な
出会いになると直感すれば→
積極的に間を取り持つ。
この場で自分が果たせる事は何か。
常に それを考え続ける。
お気をつけて またあした。
おやすみなさい
ありがとうございました。
客一人一人 その背中が
見えなくなるまで見送るのが→
白坂の決まりだ。
白坂が この世界に入ったのは女子大生だった二十歳の時。
1年でナンバーワンホステスに
上り詰め→
「これ以上 客を呼ぶな」と
言われるほど人気を集めた。
29歳 銀座で独立。
若きオーナーママとして世間で もてはやされた。
それから20年余り。
クラブの平均寿命が僅か5か月といわれる銀座で→
生き抜いてきた。
その手腕は今 業界内外から脚光を浴びる。
この日の講演会には 経営者たち
およそ50人が集まった。
注目されるのは 銀座では
異例だという 独自のシステムだ。
通常 クラブはホステスに
客と出勤する「同伴」など→
さまざまなノルマを課す事で
売り上げ向上を図る。
結果が出ないホステスは
容赦なく解雇。
それが この世界の常識だ。
だが白坂は ノルマを課さずに売り上げを伸ばしてきた。
ノルマを課さない事で ホステス
同士の足の引っ張り合いを防ぐ。
そこで育まれるチームワークを
店最大の武器としてきた。
白坂が育てるのは
ホステスだけではない。
銀座のクラブには
ほとんど来た事がないという→
20代のサラリーマン。
アルコールを受け付けないため→
酒の席で 取引先との距離が
縮められないという。
是非 銀座をご利用下さい。
こうして 何十人 何百人もの男ぶりを上げてきた。
銀座の 生きる伝説とされる
ママがいる。
♪♪~
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二十歳で熊本から上京し
この銀座で半世紀。
文壇バーのママとして生きてきた。
この日は恒例のお祭り。
静香さんが舞で
作家たちを盛り上げる。
静香さんの交友録は
まさに日本の文化の歴史だ。
その熱は 今も冷めない。
どうも はい…。
常連の北方謙三さんと
大沢在昌さん。
37年前 それぞれ駆け出しの時代に
初めて この店の扉を開けた。
数ある歓楽街の中でも 銀座に
通い続ける理由があるという。
夜の女は朝も忙しい。
朝8時 白坂さんの自宅を訪ねた。
昨日 共通のお客様が
いっぱいいて…。
夜がどれだけ遅くなろうとも
欠かさない日課がある。
朝から5時間かけて→
来店してくれた全てのお客さんにメールを書く事。
たゆまぬ努力を続けるのは
銀座への熱い思いがあるからだ。
生まれは大分県竹田市。
将来の夢は オペラ歌手。
けれど両親は 専門の高校に
行かせてはくれなかった。
白坂さんはグレた。
「なぜ私を自由にしてくれないのか」。
そんな時 よく過ごしたのが
故郷を流れる川。
ありふれた川ながらも
見ていると なぜかホッとした。
「どうにかして
ここを抜け出したい」。
落ちこぼれからの猛勉強。
早稲田大学に合格した。
上京して2年が過ぎた ある日。
「日本橋のクラブでアルバイトしてみない?」。
友達に誘われた。
行ってみて驚いた。
女性が活躍するのが
難しい時代に→
企業のトップとも対等に渡り合う
ホステスが輝いて見えた。
でも 白坂さんは
話し下手の恥ずかしがり。
人一倍熱心に話を聞き
話術を磨いた。
僅か1年足らずで
ナンバーワンホステスに。
しかし それを生業とする事に
待ったをかけた人がいた。
許しを得た白坂さんは
更なる挑戦に出た。
超一流店が軒を連ねる銀座に
飛び込んだのだ。
そこでも すぐさま
ナンバーワンホステスに。
29歳で 自らの店を銀座に構えた。
バブルは既にはじけていたが店は順調に成長を続けた。
結婚もし 2人の娘に恵まれ→
この幸せがいつまでも続くと思っていた。
けれど…。
2008年 リーマンショックが全てを変えた。
白坂さんの店にも パタリと
お客さんが来なくなった。
店の売り上げが激減する中
更なる追い打ちがかかる。
銀行による…
現金をかき集め返せるだけ返したが→
別の銀行の借金は
どうしても返せない。
共にやってきた仲間は
次々と銀座を去っていった。
自殺する人もいた。
「もうダメかな…」 そう思った。
けれど 自らも苦しい中→
店に通い 応援してくれるお客さんたちがいた。
「借金返済の足しにしてくれ」と
申し出てくれる人までいた。
「この店を 銀座を
愛する人たちがいる。→
私が諦めるわけにはいかない」。
白坂さんは銀行の支店長を訪ねては→
返済を猶予してほしいと
頭を下げた。
そして こう訴えた。
「私が銀座からいなくなったら銀座の灯が消えます。→
それでも いいんですか?」。
支店長は しばらく黙って→
白坂さんの目を見つめたあと
こう言った。
「そこまでおっしゃるなら
何とかします」。
自らの立場が危うくなる事も
顧みない 覚悟の決断だった。
白坂さんは動きだした。
銀座で商う人たちと手を携え銀座の魅力を発信した。
この銀座のために
今 自分にできる事は何か。
今日も白坂さんは行動し続ける。
雪がちらついた この日。
ちょっとした事件が起こった。
スタッフのミスで予約が重複。
数か月ぶりに来てくれた客が
満席で入れない。
白坂が すぐに動いた。
慣れた足取りで向かったのは歩いて1分にも満たない→
とあるクラブ。
ありがとうございます。
白坂の店から独立した
後輩ママが営む店。
銀座では 独立したママが→
元いた店の近くに城を構えるのは御法度。
客の奪い合いになるからだ。
しかし 白坂は所構わず独立を応援し→
11人のママを輩出してきた。
店が増えれば 銀座もそれだけ活気づくと考えるからだ。
また一人 白坂のもとから
独立する女性がいた。
ソムリエの資格を持つ…
白坂と同じビルで ワインを売りにしたクラブを開く。
だが この時 白坂の店は
深刻な事態に直面していた。
人気ホステスが店を去り→
売り上げが予想以上に落ち始めていたのだ。
2018/05/03(木) 23:56〜00:41
NHK総合1・大阪
プロフェッショナル 仕事の流儀「銀座、夜の女たちスペシャル」[解][字][再]
銀座で高級クラブを営むママ・白坂亜紀に密着!男たちを魅了する女の「艶」はもちろん、客の心をつかんで離さぬもてなしの「技」。伝説の文壇バーのママ・園田静香も登場!
詳細情報
番組内容
銀座で高級クラブを営むママ・白坂亜紀(51)に密着!普段は見られない、秘密の世界にカメラが潜入した。男たちを魅了する女の「艶」はもちろん、客の心をつかんで離さぬプロのもてなしの「技」はビジネスマンも必見。さらに「銀座の生きる伝説」といわれる文壇バーのママ・園田静香も登場!名だたる作家や漫画家たちを虜(とりこ)にしてきたその魅力を、常連客の北方謙三、大沢在昌が語り尽くす!
出演者
【出演】クラブ経営者…白坂亜紀,クラブ経営者…園田静香,【語り】橋本さとし,貫地谷しほり
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化