この女性の場合 1年たってなお母への思い 悲しみは強い。
そうした場合は→
整理する品 一つ一つを見納めしてもらえるよう→
いつも以上に
ゆっくりと進めた方がよい。
幸い今回は 整理する量は少ない。
スタッフに いつもよりペースを落として進めるよう指示する。
通常なら布団袋に すぐにしまうが
一旦 外に出し 見てもらう。
作業も終盤に入った頃…。
女性の表情は 少し和らいできた。
横尾が 常に依頼者から
言われたいと願う ひと言がある。
横尾さんは 妻と娘の3人家族。
(横尾)お勉強は?やってない!?やってない。
早朝から働く横尾さんにとって→
夕食は家族と過ごせる貴重な時間だ。
「外食の日」は 家事を担う奥さんに
ゆっくりしてもらいたいと→
横尾さんが作ったルールだ。
遺品整理という仕事に挑む横尾さん。
この仕事に携わるきっかけは
ある個人的な体験だった。
19年前 30歳の時→
祖母のトシエさんが家で入浴中 突然亡くなった。
横尾さんのお母さんは
当時 病気だった。
その体で遺品整理をするうちに
更に体調を悪くしてしまった。
それから7年後。
横尾さんはそれまでの勤め先を辞め→
遺品整理の会社に就職。
そして2年後 独立し今の会社を立ち上げた。
しかし 2か月後→
ある一つの遺品整理の話が来た時だった。
依頼者は
大阪で一人暮らしをしていた→
大学2年生の息子を亡くした
という両親。
息子が住んでいた家に
見積もりに向かった横尾さん。
悲しみに暮れる両親に
何も声をかけられなかった。
それでも 遺品整理当日に
挽回しようと考えていた。
しかし その両親から→
仕事の依頼の電話はかかってこなかった。
打ちのめされた。
遺品整理のノウハウは知っていた。
だけど自分は 本当は
全く何も解っていなかった。
この仕事を もう一度
根底から見つめ直そう。
しばらくすると 横尾さんは
通常は福祉関係者が学ぶ→
「グリーフケア」の講習を
受け始めた。
身近な存在を亡くした人に
寄り添い→
サポートする 「グリーフケア」。
その手法を学びながら現場で経験を重ねていった。
悲しみに暮れる人に
どう声をかけるのか。
どんな事をすれば
心の整理はつくのか。
考えるべき事は限りなくあった。
それら一つ一つを漏らさず考えていった。
全ては 依頼者から
あのひと言をもらえるように。
4月下旬 横尾は
ある現場の見積もりに向かった。
10日前 79歳の男性が
この家で孤独死した。
そうなんですね。
依頼者は 亡くなった男性の47歳になる息子だった。
手付かずで そのまま…。
あ~ そうなんですか。
近藤さんが小学4年の時
両親は離婚。
父と2人で暮らす事になった。
しかし その後 父に新しい女性ができた事もあり→
高校入学と同時に家を出た。
20代以降は全く連絡を取り合う事もなく→
今を迎えた。
現在 近藤さんは新聞販売店を営み→
家族4人で暮らしている。
近藤さんの口ぶりは唯一の身内としての役目を→
ただ淡々とこなしているようにも
見えた。
横尾は 親子関係が疎遠のまま
死に別れるというケースに→
これまでも向き合った事がある。
そうした場合子が親の事をよく思っておらず→
遺品整理に立ち会わないという
ケースも多い。
近藤さんは
遺品整理に立ち会うという。
横尾は その後も
近藤さんの事を考えていた。
5月。