400メートルの選手として、オ
リンピックへの出場はかなわなか
ったが、
聖火リレーのアンカーという大役
を務めたのだ。
>>一斉に燃え上がりました。
オレンジ色の炎!
7万大観衆の拍手であります。
>>走った総距離は、
6755キロメートル。
15歳から20歳の日本人が、1
0万713人が参加した。
そのうちの1人、
井街さんは、記念としてもらった
トーチを、今も大切に保存してい
る。
>>これがトーチです。
これですね。生まれて初めて、
あんな人を見たぐらい、旗を振ってらっしゃる方たちがたくさんい
たっていう、そういう記憶です。
>>当時、15歳だった井街さん
は、
走り高跳びの中学日本一になり、開会式当日のランナーに大抜てき
。
本番前には、練習を重ねたという
。
>>500メートルぐらい走りま
して、
トーチの持ち方に関しては、肩の高さまで上げて、ひじをここ、直
角に曲げて、ちょっと傾けること
によって、煙が後ろへ流れて、炎
がよく見えるようになる。
火の燃え方は、オレンジの濃い、
力強さがあったんじゃないかなっ
て、私は思います。
>>全国を駆け巡り、世界の注目
を集めた東京オリンピックの聖火
トーチ。
製造したのは、
産業用の火薬や爆薬を手掛けてい
た日本工機。
当時を知る元社員は。
>>子どもたちも感激してるんで
すよね、やっぱりね、聖火トーチ
だ、聖火トーチだって。
すごいの作ってきたんだなという
ふうには思いますわね。
>>トーチの開発当時は、まだ駆
け出しの新人だった熊谷さん。
そして何を隠そう、彼こそが、ト
ーチの実験台にされた男なのだ。
>>実験台になったみたいな?
>>まあそれだったのかなと、今
思えばそうだったのかなと。
走れと言われて、走っただけの話
で。
>>事の始まりは、オリンピック
前年の春。
国から日本工機に、ある依頼が舞
い込んだ。
>>皆さんには、
来年開催される東京オリンピック
の聖火トーチを開発していただき
ます。
>>しかし、
技術者たちに告げられた注文は、
厳しいものだった。
>>1人のランナーには1キロな
いし2キロ走ってもらいますので
、
トーチの燃焼時間は14分間を目指してください。
>>14分か。
結構長いな。
>>そして、これが一番大切なこ
となんですが、風が吹いても、雨
が降っても、
絶対に火が消えないトーチを作ってください。
>>えー?
雨でも絶対に火が消えない?
>>過去の大会でも、
聖火リレーの途中で火が消えてしまうことが珍しくなかった当時、
絶対に消えない聖火トーチは、
世界に日本の技術力を示すまたとないチャンス。
失敗が許されない国家プロジェク
トだったのだ。
>>火ですから、風や雨、それで
絶対消えないトーチと、
どうすればいいのか?ということ
は、相当頭を抱えました。
>>一番の課題となったのが、ト
ーチの燃料。
過去の大会で、主に使われていた
のは、プロパンガス。
扱いやすく、小型ボンベを交換す
れば、何度でも使用できるメリッ
トがある一方で、
風に弱い一面も指摘されていた。そこで、
日本工機の技術者たちが目をつけ
たのが。
>>そうだ。