これはあしたも雨で、
ノーフライや！ってか。
＞＞開会式の飛行は、中止になる
と思い込み、
少々はめを外してしまったのだ。当時の隊員たちを取材したノンフ
ィクション書籍にも、こう書かれ
ている。
最初は溜池のビアホールで気勢を
上げ、最後は銀座８丁目のおでん
屋で仕上げた。


誰かが、
あしたは雨だから開会式はノーフ
ライと言ったんですよ。
ふだんなら飛行の前夜に深酒はし
ないはずの彼らだが。
＞＞どれぐらい飲まれました？
＞＞せいぜいコップにビールを１杯じゃ済まなかったと思いますけ
ど、２杯ぐらいは飲んだかも分か
らない。
＞＞２杯か３杯。
＞＞ビールだけですか？
＞＞いや、日本酒も飲みましたよ
。
＞＞深夜まで続いた宴は雨音の中
、お開きとなった。
＞＞雨で飛べなければ、恥かかな
くて済むなという気持ちもありま
した。
＞＞しかし、
酔いつぶれて目覚めた翌朝、まさ
かの光景が。
＞＞うそだろ！
＞＞寝る前の大雨が、
うそのような雲一つない晴天が。

＞＞起きろ、起きろ！
＞＞カーテン開けて外見たら、真
っ青でしょ？
空が。
いや、
すげえ青空だぞと思ったら、こっ

ちも顔が青くなったかもしれない
ですね、そのときは。
＞＞もう腹をくくるしかない。
重い足取りで基地へ向かった隊員
たちに。
ラジオのインタビュー取材が。
そのときの貴重な音声が残されている。
＞＞松下さん、きのうちょっと天
気がぐずつきましてね、
ご心配なすったでしょう？
＞＞まあ、今まで私たち、一度も
雨に降られて、
天候によってスケジュールを変えたということがないので、絶対に
天気になるだろうと思っていまし
た。
＞＞ああ、そうですか。といいま
すと、みんな心がけのいい方ばか
りということになりますね？
＞＞そういうことです。
＞＞打率何割ぐらいですか？
＞＞そうですね、９割５分ぐらい
じゃないですか？
＞＞じゃあきょうも成功間違いな
しというところですかね？
＞＞そういうつもりでやりますか
ら。
＞＞ああ、そうですか。
＞＞なんと、堂々とはったりをか
ましていたのだ。
＞＞だんだんだんだんみんなと話

がしなくなっちゃって、黙り込ん
＞＞７万５０００人の歓声ととも
に、無情にも幕を開けた開会式。
ブルーインパルスが空に五輪を描
くのは、聖火ランナーが聖火台に
火をつけた直後。
５人はそのタイミングから逆算した時刻、
１５時１０分２０秒に合わせて基
地を飛び立っていた。
しかし。
選手入場が長引き、開会式のタイムスケジュールに遅れが。
ブルーインパルスは、競技場の上
空へ入るタイミングを完全に見失
った。
そのとき、
隊長がある決断を下す。
＞＞こうなったら、一か八かだ。
＞＞交信に必要な無線を捨て、ラ
ジオ中継に切り替えたのだ。
＞＞聖火ランナーが入ってきてか
らは、
スケジュールは乱れないはずだ。
＞＞ラジオ中継なら聖火点灯のタ
イミングが分かる。
これがピンチを救った。
当初の予定から３分遅れて聖火ラ
ンナーが入場。
聖火台に火をつけた次の瞬間。
ブルーインパルス、
奇跡のアクロバット飛行をご覧い