きょうから被告人質問が始まります。
>>平成23年3月。
東京電力福島第一原発を襲った津波。
世界最悪レベルの原発事故で、

多くの人たちが避難を余儀なくされました。
近くの病院の入院患者の中には、
避難の途中で亡くなる人もいまし
た。
入院患者など44人を死亡させたなどとして、
業務上過失致死傷の罪で強制的に


起訴された、
東京電力の旧経営陣3人。
去年6月に始まった裁判では、
これまで29回の審理で、
東京電力の社員や津波の専門家など、
合わせて21人の証人尋問が行わ
れてきました。
>>今回の裁判、被告となってい
るのはこの3人です。
社長、
会長として経営のトップにいた勝俣被告。
また、
原子力部門を担当する元副社長の武黒被告と武藤被告です。
武藤被告は現場の社員からの報告
を受け、指示を与える立場でした。
3人は無罪を主張しています。
そしてこの裁判の争点、大きく2つあります。
予見可能性と結果回避可能性です。
>>ではここからは、裁判を傍聴
してきた大崎記者とお伝えします。
大崎さん、
まずこの予見可能性という点、改
めてどういったことでしょうか。
>>地震に伴う津波による原発事
故を予測することができたかとい
うことです。
実はこれまでの裁判では、
東電で津波対策を担当していた社
員たちが、事故の前に巨大な津波
を想定していたと証言しているん

です。
それによりますと、原発事故の3
年前、平成20年の3月には、
福島第一原発で津波の高さが最大
15.7メートルに達するという
計算結果がまとまっていたという
んです。
原発の敷地の高さは10メートル
ですので、それをはるかに超える
高さの数字です。
>>これ、平成20年、事故の3
年前ですよね。
この15.7メートルというのは、
何に基づく予測だったのでしょう
か?
>>その根拠となったのは、平成
14年に政府の地震調査研究推進
本部がまとめた、長期評価という
見解です。
福島県沖でも巨大津波を伴う地震
が起きる可能性があるとしていま
した。
社員たちは、対策を取るべきだと
考え、この沿岸に防潮堤を建設す
ることなどを検討したということ
です。
そしてこの年の6月10日、
武藤元副社長に対策の必要性を説
明しました。
NHKでは、このときの説明に使

われた資料を入手しました。
資料は、14ページに渡るもので
す。
中では、
15.7メートルという計算結果が示されています。
高さ10メートルの敷地に10メ
ートルの壁が必要という記載も。
沖合に防潮堤を作るという対策の
案も示されていました。
>>数字も含めて、かなり具体的
に見えますね。
>>そうなんです。
ところが翌7月の31日に行われた、
この2度目の説明で、
武藤元副社長から、対策、
すぐには取らずに、
専門家に検討を依頼するという方針が伝えられます。
社員の1人は、
予想していなかった結論で、力が抜けたと証言しました。
>>なぜこの7月31日のときに、
現場の意向が受け入れられなかったんでしょうか?
>>その点がまさに注目です。
武藤元副社長が、
この最初に報告を受けた6月10
日から、
対策を保留することを決める2回
目の説明までのこの1か月半の間
に、どのように検討を進めたのか、
その経緯というのは分かっていな
いんです。


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