人間ではなく 精霊なのだという。
(赤ちゃんの泣き声)
硬い草で へその緒が切られる。
随分たってから
母親が バナナの葉を持ってくる。
胎盤が包まれる。
森につるしアリに食べさせるという。
直後 母親が初めて子どもを抱く。
精霊だった子どもを 人間として迎え入れたことを意味した。
この村では ほとんどの夫婦が
一夫一妻だが→
男たちは
出産には 一切 かかわらない。
人間として迎え入れた子どもを
母親は生涯をかけて育てる。
子育ては 家族全員で助け合う。
男も 狩りの回数を増やす。
♪♪~
人間か精霊かこの村では 母親が決める。
理由は問われず
母親以外は ただ 受け入れる。
♪♪~
同居して 90日目。
1つの家族が シャボノから消えた。
村の男に聞くと 家族は自分たちの家を建てたという。
ヤノマミは 人口が増えると
分裂すると言われている。
政府の
へき地医療が始まって以来→
村の人口は
倍近くまで膨らんでいた。
家には 誰もいなかった。
男は「怒って出ていった。娘が妊娠した」と言った。
家族は 森を焼き払って
畑を造っていた。
妊娠したというのは→
子ザルに だ液を与えていたあの少女だった。
少女は 14歳。
結婚は していない。
この村では
14歳で妊娠することも→
未婚のまま出産することも
珍しいことではない。
120日目。
少女の家族が シャボノに戻った。
なぜ戻ってきたのか。
両親は 何も語らない。
ただ 少女に臨月が近づいていた。
この村では 毎年20人の子どもが産まれ→
半数以上が
精霊のまま 天に返される。
14歳の少女が
一人で決めねばならない。
♪♪~
♪♪~
130日目。
少女の出産を手伝うため女たちが森に入る。
陣痛から45時間後。
少女が出産し 決断する。
少女は 我が子を
精霊のまま 天に送った。
その夜 出産による出血が続いた。
少女は 土の上に腰を下ろしたまま一夜を明かした。
夜明け前 少女の囲炉裏から
かすかな声が聞こえてきた。
少女の隣で
父親が何かをつぶやいている。
少女の子どもは シロアリに食べられ
精霊のまま 天に昇る。
子どもを食べたシロアリは
焼かれて灰となり 土にかえる。
5日後 激しい雨の中
女たちが川に入る。
毒草を川に流し
しびれて浮かんでくる魚を取る。
子どもたちが 魚を取る。
臨月の近い女も 魚を取る。
少女も 魚を取る。
森で生まれ 森を食べ森に食べられる。
森で生まれ 森を食べ
森に食べられる。
彼らは ただそれだけの存在として
森の中にあった。
ヤノマミ。
それは 「人間」という意味だ。
2018/12/15(土) 01:40〜02:40
NHK総合1・大阪
NHKスペシャル選「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」[字]
アマゾンの最深部に1万年以上、独自の文化・風習を守り続ける部族がいる。欧米人に“最後の石器人”と呼ばれるヤノマミ族だ。原初の暮らしの中で人間を深く見つめる。
詳細情報
番組内容
アマゾンの最深部に1万年以上、独自の文化・風習を守り続けている部族がいる。欧米人に“最後の石器人”と呼ばれているヤノマミ族だ。取材班は、ワトリキと呼ばれる集落に150日間、同居した。森の中、女だけの出産、祝祭、森の精霊が憑依(ひょうい)し集団トランス状態で行われるシャーマニズム、集団でのサル狩り、深夜に突然始まる男女の踊り、そんな原初の暮らしの中で、人間を深く見つめていく。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般