2019/02/17(日) 21:00〜21:50 NHKスペシャル 平成史 第5回「“ノーベル賞会社員”〜科学技術立国の苦闘〜」[字]


未知のタンパク質も抽出していたのである。
田中は 分析結果を
医療の専門家に持ち込んだ。
アルツハイマー病研究の第一人者
柳澤勝彦。
当初 柳澤は
専門外の田中の相談に冷ややかだった。
血液検査でアルツハイマー病を

診断することはできない→
というのが医学界の定説だった。
血液中のアミロイドβは→
その日の体調などにより
量が増減するからだ。
しかし 柳澤は 田中が持ち込んでいた
未知のタンパク質に興味を示した。
実は この物質こそが→
アルツハイマー病 早期発見のカギを握っていたのである。
柳澤は 血液中のアミロイドβと→
未知のタンパク質の関係を調べることにした。
認知機能が正常な人から


重度のアルツハイマー病患者まで→
60人余りの血液を分析。
すると 驚きの結果が出た。
脳に異変が起きていない人の血液では→
アミロイドβは未知のタンパク質より多かった。
一方
脳に異変が起きている人の血液では→
アミロイドβは 未知のタンパク質より
少なくなっていた。
つまり 血液中の未知のタンパク質が
アミロイドβより多くなった時→
アルツハイマー病が発症するリスクが
高くなることが明らかになったのだ。
症状が現れる 実に30年前に→
その兆候を診断できる可能性さえあるという。
去年2月
このアルツハイマー病に関する研究は→
科学雑誌「ネイチャー」に掲載され
大きな反響を呼んだ。
田中は 再び世界の舞台に躍り出た。
25歳の時 化学薬品を誤って使うという偶然によって もたらされた世界的発見。
そして 未知のタンパク質が
抽出されたことによって開発できた→
人の命を救う診断法。
偶然も強い意志がもたらす必然である。
田中は ノーベル賞の呪縛から
ようやく逃れることができた。
突然の受賞から 16年の歳月がたっていた。
自問自答しながら…。はい。
この16年の いわば大半を→

まだ終わっていないとも先ほど おっしゃっていたんですけど→
その歩いてこられた道を振り返ってみると
それは どんな道でしたか。
<今回 私は 2人のノーベル賞受賞者への
インタビューを通して→
イノベーションが次々と生まれる環境を
どう作っていけるのか→
探りたいと思いました。→
今 日本のみならず世界は大きな転換期を迎えています>
<持続可能な社会を実現していくために→
新たなイノベーションに対する期待はかつてないほど高まっています>
<日本が科学技術立国として
あり続けるためには→
何が求められるのか 改めて聞きました>
日本には すばらしいシーズがまだまだたくさん あるはずだと→
そうしたシーズを生かしていく上での→
創造性を生み出す環境を本当に醸成していきたい。
そこでの最大のカギは 何でしょうか。
バブル崩壊後日本の競争力が低下していって→
なかなか新しいビジネスモデルも
生まれないし→
イノベーションが必要だといわれながら
革新的なものができない。
田中さんのご経験から→
イノベーション 独創が生まれる環境とは…。
まず環境というよりも
捉え方といいますか…
<ノーベル賞ラッシュに沸いた
平成の時代。→
その多くが 過去の遺産によって築かれた

成果と言っても過言ではありません。→
揺らいだ科学技術立国の土台。→
しかし 田中さんの16年間を見つめ本庶さんの話を伺う中で→
未来への種
イノベーションにつながる種が→
数多く存在していることに
気付かされました。→
この未来の種が
実を結ぶために→
発想豊かな
若い研究者たちが→
伸び伸びと研究できる環境を
作り上げていくことが→
何よりも大切だと思いました>
日本の科学技術独創が生まれる土俵については→
悲観されていない。
してません。 はい。
田中耕一は
今 新たな試みを始めようとしている。
タンパク質を分析する装置を