粒子が極めて細かかったことです。
その細かさが
さまざまな脅威につながっていました。
粒子の細かさは 津波の重さに影響します。
通常の海水は 1リットルあたりおよそ1,030g。
一方 黒い津波では
1,130gありました。
およそ10%
重くなっていました。
粒子が細かいと水と混ざり合いやすく
密度が高くなるためです。
津波の流れなどによって→
実際は より密度が高くなった場所もあったのではないかと見ています。
津波は重くなるほど
押し流す力が強くなります。
力を増した黒い津波が→
人々の避難をより難しくした可能性が見えてきました。
湾の近くの この場所で
撮影された映像です。
黒い津波が既に押し寄せています。
画面左に向かって歩く男性がいます。
津波の高さは 膝程度。
しかし 津波に倒されます。
立ち上がっても再び倒される男性。
確か ここが 22.5でしたよね。
有川教授が詳しく映像を解析しました。
この時 黒い津波の高さは地面から50cm程度。
計算では 男性の両足には
およそ70キロの力がかかっていました。
これは 通常の海水よりも10%
6キロ余り強い力です。
力が増加したことで足を取られ→
避難できなくなった可能性があるといいます。
(鈴の音)
黒い津波に流された男性はこのあと亡くなっていました。
映像に映っていた中川秀一さんです。
息子の修さん。
あの日起こったことを忘れてほしくないと
今回 取材に応じてくれました。
秀一さんは
気仙沼で衣料品店を経営してきました。
一度 高台に避難したあと
店舗を兼ねた自宅に戻ろうとして→
津波に巻き込まれました。
だから まあ う~ん 何だろうな…。
これですね。 本人の財布の中から
見つかった千円札ですね。
これが 本人がつけていた万歩計。
あの日 父の秀一さんが身につけていた財布や時計は→
砂や泥がついた状態で見つかりました。
黒くなったことでより脅威を増していた津波。
修さんは 二度と同じような犠牲を
出してほしくないと思っています。
8年前のあの日。
津波は すさまじい破壊力で町全体をのみ込んでいきました。
僅かな時間で
次々と押し流されていく建物。
気仙沼では…
黒い津波は 建物の被害にも影響を与えていたのか。
3 2 1…。
ペットボトルの黒い津波を再現し実験で詳しく調べます。
まず見るのは 津波の先端部分の力です。
画面 上は水。
下は 黒い津波を再現しました。
極めて細かい粒子を入れ水よりも10%重くしています。
壁に衝突する時の力を比べる実験を
繰り返しました。
水の場合 壁にぶつかった瞬間の力は→
1m^2あたり256キロでした。
黒い津波では 水より10%重いため→
単純計算では 280キロになるはずです。
しかし 結果は意外なものでした。
最大で 556キロに達したのです。
これは 想定を更に上回る 2倍の力です。
力が大きくなった理由は波の形にありました。
水の場合 波の先端は なだらかです。
一方 黒い津波では波が盛り上がるように進んでいました。
黒い津波は 細かい泥を含んでいる分→
下の部分で地面との抵抗が生じます。
上の部分は 抵抗が少ないため→
後ろから来た波が乗り上げ盛り上がります。
波が立ち上がる形で壁にぶつかるため→
破壊力が増すのです。
もう一つ 有川教授が注目したのは
建物を浮かせる力 浮力です。
建物に見立てた模型を→
ペットボトルの黒い津波と同じ重さにした液体と 水に入れ→
浮かせる実験を行います。
黒い津波では 18.5cmで模型が浮き上がりました。
一方 水は
同じ水位でも浮き上がりません。
液体の密度が高いほど
浮力は より大きくなるからです。
実際の映像で見てみます。
午後3時33分ごろ 撮影された映像です。
建物が そのまま浮き上がり
流され始めます。
奥の方からも 次々と建物が流れてきます。
黒い津波によって 建物の流され方が左右されたと 有川教授は見ています。
人々の命を奪い