政財界の接待が 夜ごと行われる赤坂は→
間もなく 変なうわさ話を耳にした。
「必ず結果を出し 見返してみせる」→
さらに力を入れたのが
客を楽しませるための話術。
ゴルフや競馬など
あらゆることを勉強した。
そして 昭和40年代半ば 30歳を前に→
育子さんには多くのごひいきが つくようになった。
時に 政界のトップ。
時に 国民的スター。
いつしか育子さんは 赤坂で
最も人気のある芸者の一人となった。
ごひいきの 社長の宴席に呼ばれた。
育子さんは いつもどおりお酌と余興で動き回り→
社長が連れてきた女性客には
ゴルフ話で盛り上げた。
だが 帰りがけ
社長が先輩芸者に こう言い残した。
ショックだった。
一体 自分の何がいけなかったのか?
後日 先輩芸者に尋ねると
原因はゴルフの話だった。
「じゃあ こういう時は こうした方が
いいんじゃないですか」とかって→
その話やってたら…
決して失礼なことを言ったつもりはない。
もう一度 全てを一から見直そう。
育子さんは覚悟を決めた。
お座敷では 会話をしながらも→
客の細かな言動にまで注意を払うようにした。
踊りのうまい先輩芸者に頭を下げ→
指先の角度から目線に至るまで徹底的に細部を見直した。
さらに 着付けから化粧 歩き方。
♪♪~
気が付けば あっという間に
62年が過ぎたという育子さん。
来年80歳を迎える育子さんに
思いきって聞いてみた。
2月中旬。
この日 育子は芸者衆を集めある話し合いを行っていた。
うん 二日間やる。
20年以上 呼ばれ続ける この大切な席で今年は何を踊るか。
「江戸まつり」とは 昔からある小唄。
その曲を使い オリジナルの新しい踊りに挑もうと言いだした。
男役と女役をたて
色恋の絡みを見どころとする。
仕草や表情に
いつも以上に高い表現力が求められる。
この踊りを 育子は
二人の芸者に任せたいと考えていた。
男役は 22年目の真希。
女役は 15年目の真由。
次世代を担う芸者として
育子が期待を寄せる存在だ。
安心してお座敷を任せられる
実力のある二人。
だからこそ育子は もう一段上の
芸者になってほしいと考えていた。
今回の「江戸まつり」の曲に合わせた→
新たな振付が完成した。
男女の色恋を表現する中で
これまでにない斬新な動きも加えられた。
小道具。
小道具。
男女の思いを伝えるのは 携帯電話。
本当だよ。
おもしろいでしょ。
稽古が始まった。
男役の経験が浅い真希は
慣れない仕草に戸惑っていた。
どこだ?
ああ… はい。
はい。
そうそう…。
♪♪~
酒に酔った男を心配し女が引き止める この場面。
女役の真由は 男性への恋心を
表現することに苦戦していた。
ここら辺に 手があんだからさ…。
本番まで あと4日。
真希と真由
完成度がなかなか上がらない。
これもね こうやるから…→
もし… とこっち 手はここで下ろす。
休憩もとらずに
稽古をつけている時だった。
えらいことだのう。
真由がつぶやいた後ろ向きな言葉に育子が語りだした。
迎えた本番当日。
大広間は 満席。
余興が始まった。
♪♪~
いよいよ 真希と真由に託した
「江戸まつり」。
最も稽古に時間を割いた あの場面。
(笑い)
♪♪~
(拍手)
会場からは