はい。
その男の仕事は 昼夜を問わず
いつも突然 舞い込む。
亡き人を悼み 送る。
亡くなった人の体を拭き 化粧をし仏衣を着せ 最後の姿を整える。
棺に納めるまで寄り添い 送り出す。
映画「おくりびと」では納棺師だった父と共に技術指導を行った。
これまで 3,000を超える魂を送ってきた。
木村のもとには全国から納棺の依頼が入る。
この日は 前日にがんで母親を亡くした…
肝臓を患っていた母。
美奈子さんは
あることを気にかけていた。
肌に黄疸が出てしまっていた。
化粧を欠かしたことのない母の最後はきれいな姿で送ってほしいという。
早速 木村は亡き人への化粧
「死化粧」の準備に取りかかった。
翌日には 遠方からも遺族が集まる。
それまでに 生前の母らしい表情を取り戻してあげたい。
使う化粧品は油分を多く含む
専用のものだ。
亡くなった人の表情を より繊細に
整えたいと 木村が開発に携わった。
赤を中心に 6種類を組み合わせ
肌色に近づけていく。
だが ある箇所だけ 木村が化粧を
ほとんど施さないところがあった。
最後の瞬間に立ち会う納棺師として
大切にしていることがある。
1時間かけ 化粧を終えた。
遺族と対面する。
母との思い出話に 花が咲いた。
翌日。
亡き人を棺へと納める 納棺を迎えた。
(一同)よろしくお願いいたします。
通常の納棺では
棺に納めるまでを遺族に見せたり→
遺族と共に行うことは ほとんどない。
見ている遺族に痛々しさを感じさせないよう→
優しく死後硬直を解く。
木村が遺族を促した。
続いて 着せ替え。
日本舞踊の動きを取り入れた。
決して肌を見せることなく
あの世に渡るための仏衣に着せ替える。
丁寧に ゆっくりと 家族が亡き人の死を
悼む時間と空間をつくり出す。
あえて遺族と共に行う 木村の納棺。
一つの信念がある。
そして最後。
皆で支え 棺へと納めた。
はい ありがとうございます。
確かな技術に裏打ちされた 木村の納棺。
だが 全国から依頼が入る理由は
それだけではない。
通常 納棺師は葬儀会社から派遣され→
葬儀が始まるまでの僅か1時間ほどで遺体を整え 棺に納める。
だが 木村は
葬送の全てを行う会社をつくり→
亡き人や遺族と より深く関わることで
その人に合わせた納棺を行う。
(ノック)
父を亡くした男性からの依頼だった。
渡邊 隆さん 37歳。
父は 喉のがんを患い前日 息を引き取った。
木村は 時間をかけて
父親の人となりを聞いていく。
じゃ 薫さんとは もう…
亡き父は 隆さんが幼い頃家族を置いて 家を離れたことがあった。
わだかまりを抱えたまま
この時を迎えてしまった。
明日 納棺を迎える。
隆さんが父に伝えることのできなかった思いを どう届けるか。
お話をしたかったんだろうな
という思いですよね。
サケ班。 釣りざお班。
(女性)釣りざお班で。
木村が動きだした。
翌日。
はい。
(木村)ほんとですか。
最後の別れの前。
木村が作った紙粘土のサケを隆さんに渡した。
父へのメッセージが書けるよう
あえて色は塗らなかった。
やっと 父に思いを伝えられた。
亡き人を悼むたび 木村は思いを強くする。
札幌市の郊外にある 木村さんの実家。
(取材者)お邪魔します。どうぞ どうぞ。
家族のいる東京が拠点だが
北海道で仕事があれば 実家に泊まる。
アイロン係。
父の背を追い 納棺師という道を選んだ木村さん。
だが両親は 人の死と共にあるその道を
歩んでほしいとは思っていなかった。
昭和63年 木村さんは→
納棺師の父眞二さんのもとに生まれた。
父は 自分の仕事について
子どもたちに語ることはなかった。
だが 木村さんが11歳の時に参列した