編集者として働いていた。
その一方で 今 勤めている会社でも
フードライターをやっていた。
財テクと食 まさに
二足のわらじで記事を書いていたのだ。
初めて担当したのは この焼肉特集。
ペンネームは…
…を そのまま名前にした。
そして 38歳の時現在の編集部に転職を決める。
ところが その3年後
ある苦い経験をする。
常連さんを大切にしたいと
取材お断りの とんかつ店があった。
夫婦二人で営む その店に
植野さんは何度も通い詰め→
取材許可を取り付けた。
雑誌掲載から 1か月後の事だった。
雑誌の掲載自体 夫婦は喜んでくれた。
しかし 閉店してしまった。
あの時 自分に落ち度は なかったか。
あの時 一体どうすればよかったのか。
あの時の答えを 今も探し続けている。
日々 問われる 表現者としての責任。
この店で いっときの間だけ
植野さんは解放される。
不動の人気を誇る 食の専門誌。
その名物編集長 植野広生。
この春…。
植野が仕掛けた 新たな特集企画。
その特集とは…。
卵料理。
時に主役 時に引き立て役として
活躍する卵。
シンプルながらも 奥深い世界を
いかに読者に伝えるか。
雑誌作りに懸ける男の ひと月半の闘い。
卵特集の締め切りまで2週間を切っていた。
植野は京都にいた。
訪れたのは190年続く老舗の仕出し専門店。
取材するのは 店の名物 だし巻き卵。
今回の卵特集では名店の門外不出のレシピを大公開。
それが目玉となる。
なるほど。
そこに迫る。
植野は今 シンプルなおいしさを追求し続けている。
食パンや おにぎり
更にはシュークリームなど→
シンプルすぎて
特集に組まれてこなかった料理を→
あえて取り上げている。
インターネットにおいて食に関する情報が あふれかえる時代。
客も そして作り手も
その情報に振り回されてはいないか。
シンプルで おいしい 本物。
それを今 読者に伝えたい。
締め切りまで 残り6日。
掲載する卵料理 80皿の撮影を既に終え→
取材は1軒を残すのみとなっていた。
植野は編集長として最も大事な作業に取りかかった。
表紙写真の選定だ。
表紙の出来で売り上げは大きく左右される。
植野は 卵料理と聞いて
イメージしやすい目玉焼きを→
表紙の顔に考えていた。
だが…。
写真としては申し分ないが→
表紙に使うには何かインパクトが足りない。
最後の取材先に 表紙用の
目玉焼きを作ってもらうことにした。
締め切りまで あと2日。
表紙用に特別に作ってもらった目玉焼き。
その写真を確認する。
すると 部下が言った。
同じ日に撮った江戸前の玉子焼きの方が
インパクトがあると主張した。
しかし この写真だと
一目で卵のイメージが湧きにくい。
植野がねらう 気軽で毎日楽しめる
卵料理の感じがしない。
植野たちは
今回の取材で撮影した写真の中から→
表紙になりえるものがないか探し始めた。
読者の胃袋をつかむ写真は あるか。
その時。
一枚の写真に目が留まった。
中華料理店の卵とじ。
鮮やかな黄色 卵のインパクトが丸出しだ。
売り上げに直結する 雑誌の顔。
見誤れば 自分の責任。
(植野)我々の覚悟を
ちゃんと出すしかないんですよ。
締め切り当日。
この卵とじの写真で 勝負する。
目玉焼きを作ってくれたシェフには→
後日 植野と部下が 丁寧にわびた。
発売から1か月後。
卵特集の1か月の売り上げは前年平均を上回った。
植野は 和歌山にいた。
(男性)イワシの干物あんのやんか。
うま。