何より驚かされたのは出迎えと見送りの言葉。
たとえ接客中でも 声を張る。
hitomiは 常に全力。
活気の中心には 彼女がいた。
hitomiには メイドとしての信念がある。
hitomiには 店に立つ以外に
重要な役目がある。
(hitomi)おはようございま~す。
おはようございま~す。
それは 運営会社の執行役員として→
300人のメイドを指導しそのプロ意識を高めること。
…ってことだと思う。
6年前 hitomiが作成したメイドマニュアル。
自ら培ってきた接客術などを
70ページにわたって明文化。
さらに 客とメイドのボディータッチや
店外交遊の禁止を徹底するなど→
イメージ向上に努めてきた。
こうした積み重ねが メイドカフェを→
修学旅行生さえも来る場所へと
変えてきた。
hitomiの夢は メイドカフェを
「文化」として根づかせること。
だが 頭の痛い問題が浮上していた。
近年 秋葉原は外国人観光客に大人気。
英会話教室を行うなど
店では対策を進めてきたが→
不安を抱くメイドは 少なくない。
(英語)
この日も開店早々
外国人観光客がやって来た。
hitomiが先陣を切る。
(hitomi)ハロー!
すご~い!
続々と 海外からの客がやって来た。
(ハンドベル)
若手も hitomiに続く。
スリー ツー ワン
萌え萌え きゅ~ん!→
ありがとうございま~す。→
やった~。イェイ!
だが 所定の接客が済むと 空白が生じた。
若手が動いた。
だが 英語は苦手。
たとえ拙くとも 懸命に向かっていく。
スリー ツー ワン 萌え萌え…。
(hitomi)バイバーイ!サンキュー!
サンキュー! いってらっしゃいませ。
バーイ! サンキュー!
(hitomi)よろしくね。 お願いしま~す。
はい ありがとうございます。
よろしくお願いします。
お疲れさまでした。 ありがとう。
(取材者)こんにちは。 お邪魔します。
いえいえ どうぞ。
3年前 hitomiは結婚。
去年 冬 母になった。
仕事を休み 育児に専念する道もあった。
だが あえて メイドを続ける道を選んだ。
息子が生まれてから
ある思いが強くなったという。
母とメイド。
その両立を目指す日々がこの春 始まった。
朝は 出勤前に保育園に立ち寄り
凛斗くんを預ける。
おはようございま~す。
おはようございま~す。
おはよう 凛斗くん おはよう。
ハハハッ。
バイバーイ。 ありがとうございます
よろしくお願いします。
失礼いたしま~す。
お待たせいたしました。
日中は 出産前と変わらず
メイドとして店に立つ。
せ~の 萌え萌え きゅ~ん!
入りました~! バッチリです。
だが 夫婦共働きでの子育ては
想定外の連続だった。
(凛斗の声)
(泣き声)
あれ~ なんで泣くの? 君。
なんで泣くの? かわいそうに。
ママとギューッ。
ママとギュッしよう。 泣かないよ。
この日 いつもの出勤時間になっても
hitomiは姿を現さなかった。
いやぁ…
初めての出来事にいつもは気丈なhitomiも どこか不安げ。
携帯電話を しきりに確認する。
しかし この日はどうしても外せない仕事が入っていた。
(一同)おはようございま~す。
じゃあ… ゴー。
店のメイドたちで結成した
アイドルグループのライブリハーサル。
hitomiは その監修を担っていた。
≪暗転 曲スタンバイ。 3 2 1 ゴー。
メイドを 一過性のブームで
終わらせることなく→
文化として根づかせるために。