そして、この日…。
≫男性客に挟まれ
ぽつんと女性が1人。
話を聞いてみる。
≫清掃会社で働いているという20代の女性。
職場での人間関係に我慢できず
1人で憂さ晴らしに来たというのだが…。
≫彼女にとって、この店は
翌日から頑張るための活力を養う場所なんだな。
厳しい暑さが続く中
都会のオアシスに
吸い寄せられるように
次々とやってくる女性客たち。
その人気の理由の1つが
これだ。
≫ボリューム満点の
肉野菜定食をはじめ
麻婆豆腐や冷やし中華など
安くてうまいメニューがなんと200種類以上。
一方で、食事を目的としない
さまざまな事情を抱えた女性客も
ここには数多くやってくる。
この日も…。
≫平日の午前中から
ひたすら酒を飲み続ける
少々
近寄りがたい雰囲気の女性。
恐る恐る声をかけてみる。
≫今日は仕事が休み。
誰にも邪魔されずに
1人で飲みたかったという
商社勤務、42歳の独身女性。
≫傷を隠すためのチョーカーとは…。
一体何があったのか。
≫3年前、突然甲状腺がんの診断を受け、手術。
しかし、医師から
転移の可能性もゼロではないと
言われているという。
≫不安は尽きない。
それでも、後ろ向きに
生きていくのはやめた。
彼女は、この信濃路で
好きな酒をあおりながら
気持ちの整理をしたようだ。
≫この日やってきたのは1組のカップル。
どうやら夫婦ではない様子。
≫男性は50代女性は30代半ば。
2年半前、居酒屋で知り合い
意気投合。
以来、不倫関係を
続けているという。
だが、そんな2人に
信濃路の客は、ずばり。
≫1か月前
なんと近くに居合わせた客たちが
2人に
不倫関係をやめるよう説教。
≫彼女は
夫に対して申し訳ないと反省。
今後の2人の関係について
話し合う
いいきっかけになったそうだ。
更に、誰にも言えない事情を抱えているのは
女性客だけではない。
≫30年前から、毎日のようにここへ通っているというのは
森田さん、60歳。
≫今年3月に教員を定年退職。
悠々自適な暮らしを
送っているようにも見えるが
この日、森田さんは
頭を抱えていた。
≫この1週間前、酒に酔って
パスポートを、どこかに紛失してしまったという。
実は、近々
海外へ行かなければならない
事情があった。
≫長年、培った教員としての経験を生かし
中国で、看護師の育成事業を
始めるというのだが
おいおい…
そんな調子で大丈夫か。
≫8月中旬
世間はお盆休みに突入。
人気店の信濃路も
このときばかりは
お客さんがちらほら。
そこに、ぽつんと1人男性の姿が…。
≫男性は56歳の会社員。
娘が2人いるという。
≫聞けば、3年前に
突然リストラ。
再就職を果たしたが
これでよかったのか?
歩んできた人生に
思いをはせていた。
そして、ある思いを打ち明けた。
≫娘たちのためにもうひと頑張り。
父親は1人、酒をあおりながら
気持ちを固めていた。
≫怒り、悲しみ、笑い。