しかし 小巻はメルのストーリーに着目した。
「引きこもりを克服した」という設定が
若い女性に響くと踏み→
テーマパーク限定のキャラクターにした。
グッズも このテーマパークのみで販売。
徐々に 人気が上がり始めた。
♪♪~
今では メル目当てに訪れる客も
多いほどの人気者に育った。
グッズやキャラクター
その一つ一つを おろそかにしない小巻。
それは ここで働く社員に対しても同じだ。
毎月 誕生月の社員全員と会い→
仕事や趣味 将来の夢などを聞く。
経営者の役割はその人を知り 可能性を信じ→
花開かせることだと 小巻は言う。
ささいなことでも 小巻は全力で褒め自信をつけさせる。
♪♪~
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「信じて 支えて 伸ばす」。
小巻さんの その哲学は→
9年前 51歳で入学した
東大大学院で育まれた。
仕事をしながら 寝る間を惜しんで
教育学を研究。
そこまでしたのには わけがあった。
小巻さんは 1959年 東京生まれ。
幼い頃から
やると決めたら やり抜く性格。
正義感の強い女の子だった。
大学卒業後 キャラクターの会社に就職。
25歳で社内結婚。
退職し 専業主婦になった。
2人の子どもに恵まれ
幸せに暮らしていた。
でも 3人目を妊娠していた34歳の時
人生は暗転した。
当時2歳だった次男が
不慮の事故に遭い 亡くなった。
家族の前では 涙を見せまいと
自らを奮い立たせた。
でも とめどなく 涙は流れ→
なぜ 自分は生きているのか分からなくなった。
2年後 何もかも手につかなくなり
離婚を決意した。
2人の息子と3人でゼロからのスタート。
養育費で生活はできたが小巻さんは 仕事を探した。
見つけた働き口は 化粧品販売。
小巻さんは 寝食を忘れて のめり込み→
トップクラスの売り上げを
記録するまでになった。
でも このころから
子どもにも 完璧を求めるようになった。
特に 長男には厳しかった。
しかし ある日思いがけず 長男の苦しみを知った。
同級生の母親から→
長男が部活で孤立していることを知らされた。
まず変わるべきは 自分。
心理学や教育学を学び子どもとの向き合い方を見直した。
仕事も辞め 元いた会社で
再スタートを切った。
間もなくして
長男が高校の成績が振るわず→
落第寸前に陥っていることを知った。
それまでの小巻さんなら「勉強しなさい」と頭ごなしに叱っていた。
でも何も言わず ただ見守った。
55歳の時。
赤字続きのテーマパークの運営に
携わることになった。
でも 小巻さんは
テーマパークに関しては ずぶの素人。
社員からは お前に何ができると
白い目で見られた。
それでも 小巻さんは
社員1人1人と向き合い→
やりたいことを聞き出した。
「大人をターゲットにしたい」という社員たちの強い思いが見えてきた。
小巻さんは その背中を押そうと
思い切って かじを切った。
♪♪~
まず仕掛けたのが美男子を主役にしたミュージカル。
更に 11歳以上という年齢制限を設けた
本格的なホラーなど→
大人ねらいの企画を 次々と開催。
テーマパークに縁遠かった20代の女性客を獲得し→
来場者数は どんどん増加した。
気づけば 社内の空気は変わっていた。
小巻さんは ひとつの確信を得た。
V字回復を成し遂げた小巻。
今もなお 挑戦の日々は続いている。
この日は YouTubeで配信するコンテンツの打ち合わせ。
キャッチーな動画で
新しいファンをつかみ→
来場につなげるねらい。
組むのは 23歳の社長が経営するIT企業。
若い感性から生まれる
規格外のアイデアを期待し→
小巻が じきじきに オファーした。
いずれも刺激に満ちたアイデア。
だが 小巻は 満たされない。