2019/12/17(火) 19:30〜20:29 よみがえる 美空ひばり[字]
しかし これだけでは歌になりません。
それぞれの音に ビブラートがかかり→
どのぐらい震えているか。
ファルセットなどによる裏声かどうか。
さまざまな表現方法を掛け合わせて→
音を作らなければなりません。
歌声にするには天文学的な数の音が必要となります。
こうした数の音を 人間が手作業で
用意することは不可能です。
そこで 今回の開発には
ディープラーニングと呼ばれる→
AIが自ら学習を繰り返すシステムを
採用しました。
まず レコード会社が
今回 特別に提供してくれた→
ボーカルのみの音源を AIは
教師データとして学習していきます。
♪♪「その日まで」
AIは ひばりさんの声を1秒当たり 100に分割します。
そして 音譜と歌詞を基に
ひばりさんが どう声に出したか→
楽譜と歌声を照らし合わせながら
解析します。
そして 人間には 到底 見つけられない
楽譜と声の相関関係→
つまり ひばりさんの歌い方のルールを
見つけ出します。
開発から半年。
AIは 驚異的なスピードで成長を遂げていました。
「アナと雪の女王」で有名な…。
AIに大ヒット曲の楽譜を与えてみると…。
♪♪「ありのままの 姿見せるのよ」
♪♪「ありのままの」
♪♪「ありのままの 姿見せるのよ」
♪♪「ありのままの」
どこを切っても ひばりさんの声にしか
僕は聞こえないんですけど…。
進化したAIは
新曲の出来上がりを待っていました。
秋元 康さんは 別の仕事のために
ニューヨークを訪れていました。
秋元さんは
よみがえる ひばりさんのための詞を→
ここで書こうと決めていました。
イーストリバー程近くにあるカフェ。
30年前 このカフェの この席で
美空ひばりさんの最後の曲→
「川の流れのように」の詞を
書き上げました。
♪♪「でこぼこ道や」
大スター ひばりさんのための詞を初めて書いた30年前と同じ→
震えるような気持ちで もう一度
ひばりさんのための詞を書きたい。
一つの言葉に たどりつきました。
当時 売れっ子の放送作家だった秋元さんは→
自らの仕事の行く末に疑問を感じ→
ショービジネスの街 ニューヨークで自分を見つめ直そうとしていました。
美空ひばりさんの新曲の依頼が届いたのは
その時でした。
ひばりさんが 令和の時代の今 現れたら
どんなメッセージを伝えるだろうか。
20回近く書き直した末 完成しました。
タイトルは 「あれから」。
デモの音源を聴かせてくれました。
♪♪~
秋元さんには この曲の中で→
どうしても やりたかった試みがありました。
語りです。
「さぁ 私の分までまだまだ頑張って」。
こういう感じのものがいいかなと。
みんなが…
この秋元さんの新曲は 予想どおり→
AIエンジニアを苦しめることになりました。
早速 AIに新曲を歌わせてみると…。
♪♪「あれから どうしていましたか」
過去の楽曲を学習し ひばりさんの
歌唱のルールをマスターしたAI。
これまでなかった曲調に
そのルールが通用しません。
そして
開発チームを最も苦しめたのは→
やはり 語りでした。
ひばりさんが歌った1,500曲の中に→
語りは ほとんどありません。
学ぶべき教師データが決定的に不足しています。
まあ そうですね。
こういうものがあるんですが。
「未練なのね あの人の面影→
淋しさを忘れるために飲んでいるのに」。
まずは AIに この「悲しい酒」を
学ばせてみることにしました。
「どうして
あの人を あきらめたらいいの」。
「お久しぶりです。
あなたのことを ずっと見ていましたよ。→
頑張りましたね。
私の分まで まだまだ頑張って」。
語りを作るための音源探し。
貴重な音声が眠っていました。
よろしくお願いします。