美空ひばりさんの一人息子加藤和也さん。
ひばりさんは
地方公演などで家を空ける時は→
幼い和也さんを必ず連れていくほど
溺愛していました。
和也さんは 母親のひばりさんが
残してくれた カセットテープを→
大切に保管していました。
一人 家に残した和也さんの寂しさを紛らわそうと→
ひばりさんは 童話を吹き込んでいました。
「カー君にママが お話をこれから読みます。→
『裸の王様』 これを聞きながら
おとなしく いい子で寝るんですよ」。
息子を思う
母親の優しい気持ちがあふれた→
2時間の音声データです。
「王様 私たちは織物師でございます」。
データは 直ちに
開発チームに持ち込まれました。
「ママが これから 和也が…」。
それを学習した結果は歴然でした。
「お久しぶりです。
あなたのことを ずっと見ていましたよ」。
そして…。
「お久しぶりです。あなたのことを ずっと見ていましたよ。→
頑張りましたね。→
さあ 私の分まで まだまだ頑張って」。
今後 AIが
自己学習を繰り返していけば→
語りを実現できるめどが立ちました。
息子を思う母親の愛情が 時を越えてAI開発を大きく前進させてくれました。
歌声開発と並行して
ひばりさんの姿形を再現する映像開発も→
急ピッチで進んでいました。
残された膨大な映像からひばりさんの顔の動きの法則を→
AIが学習しています。
口や歯 眉など 顔の50か所が→
新曲の歌詞に連動して動くシステムを
開発しました。
しかし いくら技術を駆使しても
乗り越えられない課題がありました。
新曲を歌うAIに
どのような振り付けを行うかでした。
美空ひばりさんに
専属の振り付け師はいませんでした。
あらかじめ
決まった動きをするのではなく→
心の赴くままに動いていました。
お客さんの反応を見ながら自在に振り付けを変える→
ひばりさんの動きを推測することは
AIをもってしても困難でした。
一人の歌手が力を貸してくれました。
こんにちは。よろしくお願いします。
ひばりさんを師と仰ぐ
天童よしみさんです。
ひばりさんみたいに なりたいっていう→
子どもの時から そういう夢を持って歌手になったので。
賞を総なめにする天才少女と
大阪で名をはせていた天童さん。
8歳の時 ひばりさんの大阪公演に
出演したのがきっかけで→
プロの道を志しました。
天童さんは ひばりさんの歌と動きを自分のものにしようと→
レコードを聴き込み
ビデオをすり切れるほど見てきました。
天童さんの体に
全身の動作を精密に記録する→
モーションキャプチャーセンサーを
装着しました。
♪♪「夕日がまた」
ひばりさんになりきって新曲「あれから」を歌ってもらい→
無意識に出る動きを ひばりさんの
CG映像に落とし込むのです。
もっと こう…
30年ぶりにステージに立ったひばりさんがお客さんとの再会に喜び→
一人一人に語りかける
そんな姿をイメージしました。
♪♪「夕日がまた沈んでいく
あっという間の一日」
♪♪「どこかに大事な何かを
置き忘れたような自分の影」
♪♪「地平線は変わらないのに
静かに移ろう景色」
♪♪「生きるというのは別れを知ること
愛しい人よ」
♪♪「あれから どうしていましたか
私も歳をとりました」
♪♪「今でも 昔の歌を
気づくと 口ずさんでいます」
♪♪「振り向けば幸せな時代でしたね」
ひばりさんが ゆっくりと観客の顔を見回す動作を随所に入れました。
よみがえるひばりさんは どんな髪形で
どんな衣装を着て現れるのか。
生前 ひばりさんと
苦楽を共にした人たちも→
このプロジェクトに
参加してくれました。
白石文江さんは
ひばりさんのヘアメークを→
25年にわたり担当。