妹は当時11歳でした。
7月23日 焼け付くように
暑い日のことです。
私たちは朝から川に行って
みんなで泳いだりして遊んでいました。
やがて祖母に呼ばれ
家に帰って食事をしました。
そのあと 祖母が言ったんです。
「誰か一人 家に残ってベッドの支度をしなさい。→
ほかの子たちは
また川で遊んできてもいい」と。
私が残って
ベッドの支度をすることになって→
みんなは泳ぎに戻りました。
そのあと 私は雑誌を読み始めて…かなり時間がたった頃→
ふと胸騒ぎがして 妹たちのところへ
行かなくてはと思いました。
丘を下っていると
向こうから いとこがやって来て…。
妹が溺れたと告げられました。
一番近くの病院までは4キロ離れていました。
私は ほかの妹や弟たちと家に残りました。
そして彼らに食事をとらせ寝かしつけました。
両親と兄が家に帰ってきたのは
夜中になってからでした。
妹は死んだと知らされました。
♪♪~
ひとつき後 私は 家から遠い村にある
全寮制の学校に入れられました。
学校には
サーミ語を話せない先生もいましたし→
寮では
サーミ語が分からない人がいる時には→
フィンランド語で話すという決まりが
ありました。
でも 私はフィンランド語を
話せませんでした。
まるで 喉を切られたような気分でした。
私は できる限り サーミ語を使いフィンランド語は話しませんでした。
私が涙ぐんだり
泣いたりしているのを見て→
一部の女子生徒が
私のことをいじめるようになりました。
私は心穏やかでいるために
逃げるしかありませんでした。
学校で 一人になれる場所といったら
トイレくらいしかありませんでした。
♪♪~
そんな時 図書室の司書の女性がこの本をすすめてくれたんです。
それで 読み始めました。
「星の王子さま」は私の友達になってくれました。
私は とても慰められました。
この本では 大人たちのかたくなさや冷たさが描かれています。
子どもは意見を持つことを許されません。
それが 当時の自分の境遇と重なってとても共感できました。
人は 他人の苦しみに
真正面から向き合いたくなくて→
ちゃかしたりするんです。
本の最初に描かれている絵です。
王子さまが 自分の星を離れる場面です。
私も同じようにできればいいのにと思ったものです。
学校や寮でのつらい状況から
逃げ出したかったから…。
私も こんなふうに鳥と一緒に飛び立って
妹のもとへ行けたらいいのにって。
♪♪~
(聞き手)どうして この一節がお好きなんですか?
それは…→
命を育んでいるものが何なのかを語っている部分だからです。 水です。
私たちが水から命を得ていることが
とても美しく言い表されています。
♪♪~
私が思うに 人が暮らしていく上で一番大切なのが言葉です。
私たちは 言葉を使って
互いに助け合います。
世界中には たくさんの言語があります。
言葉は 少し星に似ていると思います。
星空を じっと見上げていると→
だんだん見える星の数が増えていくように→
言葉も使えば使うほど
理解の幅が広がっていきます。
でも 1つの言語を完璧に理解することは
誰にもできません。
なぜなら 言葉は時とともに
変わっていくからです。
消える言葉もあれば
必要に応じて 新しく生まれる言葉もある。
それは 古い星が死に
新しい星が輝き始めるのと同じです。
♪♪~
この地で暮らしていた先住民の数は→
スペイン人がやって来た50年後には
9割減ったといわれています。
自分のアイデンティティーを
なんとか保ち続けた者たちだけが→
さまざまな方法で抵抗を試みました。
自分たちの言語を使い続け 伝統を守り→
新しい文化に吸収されまいと
戦ったのです。
そして 1932年1月