2019/12/27(金) 22:00〜22:45 ドキュランドへようこそ・選「星の王子さまの世界旅」[二][字]
先住民が政府に対して蜂起しました。
自分たちの土地を返すよう求めたのです。
しかし 数日で鎮圧され3万人を超す人たちが虐殺されました。
生き残った者は
子どもにナワト語を教えなくなりました。
弾圧される危険から
子どもたちを守ろうとしたのです。
街にはもう ナワト語を話す人はいません。
私の親の世代はまだ話すことができましたけどね。
ナワト語は先祖から伝わる
大切な言語です。
私も少しだけ話すことができます。
そのことが心のよりどころになっています。
私は ナワト語を書くことはできません。
でも読むことなら 少しだけできます。
もし 私に取り柄があるとすれば
それは ナワト語を話すことだけ。
私にとって
それは とても価値あることなんです。
(レムス)ナワト語を話せる人のほとんどは
80代か90代になっています。
一番若い人でも 55歳です。
彼女たちは 家族からひそかにナワト語を教わった→
最後の世代なんです。
祖母は 私にナワト語を教える時→
そばにいるものは
たとえ犬だろうと追い払います。
木の枝を手にドアのところに立って→
誰かが聞いていないか辺りを見回して確かめるんです。
家族も例外ではありません。
誰もいないことを確かめてから→
ようやく
ナワト語で私に話し始めるんです。
私たちは 土地も言葉も
奪われてしまいました。
土地を取り戻したいです。
祖先が暮らした場所ですし私たちの安息の地ですから→
それを次の世代に残してあげたい。
子どもたちには アメリカやヨーロッパに移り住んでほしくありません。
私は その思いを込めた歌を作りました。
「私たちはここにいる。ここで生きる。 ここが故郷」と。
♪♪~
(レムス)ナワト語のように消えつつある言語では→
新しい単語が増えることはありません。
現代の言葉では 当たり前のようにある単語や表現がないこともあるので→
それに当てはまる言葉を
探さなくてはならないんです。
例えば ナワト語には
「バラ」という単語がありません。
スペイン人がやって来るまで→
アメリカ大陸にはバラが存在しなかったからです。
バラが知られるようになったのは→
スペインの植民地となってからのことでした。
ですから 「バラ」をナワト語に訳す時
どうしたかというと→
花を意味する単語を使いました。
バラを「赤い花」という言い方で表現することにしたんです。
「星の王子さま」に出てくるバラは→
サンテグジュペリの妻コンスエロ・スンシンが→
モデルになっています。
最初にバラが登場した時王子さまはバラのことを→
なまめかしくて 見えっ張りで
手のかかる花だと言っています。
いつも注目されていないと気が済まなくて
見てもらえないと怒りだす花だと。
物語では バラは 遠い国から飛んできた
種から芽が出たといっています。
どの国かまでは書かれていませんが
実は エルサルバドルのことなんです。
ナワト語のような言葉を
多くの人に知ってもらいたい。
そうした言葉の重要性を
理解してほしいと思っています。
なぜなら 言語は文化や歴史
伝統を伝える手段だからです。
その文化の言葉を使わなければ
正しく伝えることはできません。
ですから 滅びゆく言語を保護することが
重要なんです。
そうしなければ
世界から文化や言語の多様性が→
失われてしまいます。
♪♪~
(チー)チベット語を教えてくれた
ハモ・キャブ先生と一緒に→
「星の王子さま」を翻訳しました。
とても楽しかったです。
私は主に 英語版と
フランス語版の本をもとに翻訳し→
先生は中国語版を参考にしていました。
1997年のことです。
私がまだ幼かった頃
家族全員でインドへ行きました。
家族は私をインドの学校に入れると
チベットへ戻っていきました。
私一人を里親に預けて
みんな帰ってしまったんです。
だから 当時は泣いてばかりいました。
まさか それから20年も会えないままになるなんて 想像もしませんでした。
父も母も こうなるとは