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「地球に降り立った小さな王子さまは→
辺りに誰も見当たらないことにとても驚いた。→
違う星に来てしまったのかと
不安になった時→
月の色をした輪のようなものが
砂の中で動いた。→
『こんばんは』。
とっさに王子さまが挨拶すると→
『こんばんは』と ヘビが言った。→
『僕は どこの惑星に着いたんだろう?』。王子さまが尋ねると→
『ここは地球。 アフリカだよ』と
ヘビが答えた。→
『ああ! じゃあ 地球には
人が誰もいないんだね?』。→
『ここは砂漠さ。 砂漠に人はいないよ。
地球は広いんだ』。→
ヘビは そう言ってから尋ねた。→
『君は どうしてここに来たの?』。『ある花と もめちゃって』。→
王子さまの言葉に ヘビは
『ああ』と答え 2人は黙り込んだ」。
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(フアド)タマジクト語は
母から受け継いだ大切な言葉です。
生まれてから ず~っと
この言葉で育てられました。
だから 6歳になるまで タマジクト語しか
話すことができませんでした。
私の体に染みついている言葉です。
6歳の時 父に連れられて学校へ行くと→
先生に知らない言葉で話しかけられて
驚きました。
ひと言も分かりませんでした。
これからは アラビア語を学び→
コーランを理解するようにと
言われたんです。
こうした状況に
ベルベル人の知識層は抗議しました。
伝統的な言語を教える授業を行うことを
学校に求めたんです。
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2003年になってやっと それが認められました。
学校にタマジクト語の授業が
導入されることが決まった時→
私は教科書を作る委員の
一人になりました。
私は 幼い子どもたちに
タマジクト語を教えるには→
それまでの教科書だけでは不十分だと
感じていました。
それで サンテグジュペリの→
「星の王子さま」を翻訳しようと考えたんです。
学校の授業以外でも読める
タマジクト語の本を→
子どもたちに与えたいと思ったからです。
「星の王子さま」の舞台は 主に砂漠です。
私は砂漠で生まれ育ちました。
砂漠にまつわる言葉ならたくさん知っています。
それでもやはり 「星の王子さま」には→
タマジクト語には存在しない単語も出てきました。
例えば 井戸について話している場面は→
タマジクト語では「泉」という言葉を使いました。
この場面では 水を飲むということが
伝わればいいので→
井戸からだろうが泉からだろうが
どうでもいいからです。
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(タウス)「星の王子さま」は ベルベル人にとって→
自分たちの文明や歴史を映し出す
鏡のようなものです。
言ってみれば
自分自身の姿を探し求めているんです。
ベルベル人の文化は 木々や大地など→
周りの自然と切り離して考えることはできません。
そのため 動物や昆虫が
崇拝の対象となっているんです。
例えば サラマンダーを
「清く偉大なサラマンダー」と言ったり→
岩を「聖なる岩」と言ったり。
すばらしいことの全てを自然と共に分かち合っているのです。
(フアド)タマジクト語は 話し言葉です。
家族や同じ部族の人たちなど親しい人と話す時に使います。
文字を教えるのは 昔は女性の役割でした。
ティフィナグ文字と呼ばれる文字を砂に書いて 教えていたのです。
風が吹くと文字は消えてしまって
あとには何も残りません。
ベルベル人の文化は
世界で最も古いものの一つです。
私たちは ほかの文化を尊重し
対立や戦争を好みません。
だから私は サンテグジュペリの
「星の王子さま」が とても好きなんです。
この物語は 友情や愛
そして他者を尊重することの大切さなど→
普遍的な価値観を伝えていますから。
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(ヴオラッブ)私は この地で育ちました。
ここでは サーミ語を話していました。
私が 13歳の頃の話です。