半身不随となった患者があふれた。
多くが下請け 孫請けの労働者。
補償は なきに等しい。
「オリンピックまでに」の掛け声のもと
危険を顧みない作業が横行していた。
これは 東京湾に向かう砂利船の映像。
積み荷の重さで 沈没寸前である。
道路やビルの突貫工事のため
大量の砂利を命懸けで運んでいた。
この年 3隻が沈没。 16人が死亡した。
工場では 生産を急ぐあまり安全管理は後回しにされ 事故が続発した。
<給料もらえた。→
僅かなカネでも ありがたい。→
カネがなくなるまで
東京見物することにした>
<工事のおかげで 表通りはピカピカだ>
<しかし 裏通りに入ると小さな木造住宅がひしめき合う>
<道路は凸凹で 水たまりだらけ>
<路地にまでダンプが押し寄せる>
あんたが急に曲がりゃあ→
こっちだって お前…。急に曲がってんじゃねえよ。
<誰もが殺気立っている>
<隅田川へ行ってみた>
<船で暮らす人が多いのに びっくりした>
<300年の伝統があるという 佃の渡し>
<だが 工場廃液の垂れ流しで
すさまじい悪臭だ>
は… はい。
<トイレは くみ取り式が当たり前。→
バキュームカーも 毎日は来てくれない>
あら 嫌だ! はねるよ!
<一日850台のバキュームカーが集めた
し尿は 東京湾の沖合に捨てる。→
そんなことをして大丈夫なのか…>
<ゴミの量も当然1,000万人分あるわけで…→
船で夢の島へと運ばれる>
<野良犬も ゴミ扱い>
<川にゴミを捨てるのは日常茶飯事>
<ネズミ ハエ 蚊が大発生>
<赤痢やコレラやチフス。
日本脳炎も流行している>
<俺の住んでいた同じ東京とは
思えなかった。→
2019年よりも 光は強烈だ。→
しかし その分 影も濃かった>
<上野駅は 東京の放つ光に引き付けられた
地方の若者たちであふれていた。→
どの顔も不安そうだ。→
だが 俺の時代にはない熱気も感じた>
<横町で小さな幸せを見つけた>
バン バン バ~ン!
<貸本屋だ>
<町工場の工員。 そば屋の店員>
<貸本マンガは
地方から上京した若者たちの心を捉えた>
当時 テレビでは「鉄腕アトム」などの
アニメ番組が始まり→
子どもたちが夢中になっていた。
正義の味方が悪者を倒すストーリーが夢を振りまいていた。
勧善懲悪に飽き足らない
若者の心をつかんだのが→
貸本マンガだった。
世の中の底辺でもがく人々をリアルに描く。
(銃撃音)
過激な描写も多い。
貸本マンガ
最大の巨匠 白土三平。
若い読者から
熱烈に支持された。
この年 白土が放った戦後マンガの金字塔
「カムイ伝」。
理不尽な差別に苦しむ江戸時代の農民が
圧政に立ち向かう姿に→
貧しい若者たちは 自分自身を重ねた。
<しばらくは 貸本屋へ通い詰めた>
あんた 好きだねえ マンガ。→
毎日だね。
すみません。
何だい 「墓場鬼太郎」かい?
(雷鳴と不気味な泣き声)
気味悪くないかい?
水木先生の傑作です!
先生は日本を代表する巨匠!…になります 将来。
えっ? み… 水木しげるが?
間違いないです。 絶対です。
あんた… うちで店番やらないか?
へっ?
<貸本屋のおやじさん
住み込みの店員 探していたらしい>
<マンガの神様に救われた>
記録映画保存センターは東京大学などと協力し→
高度成長期の映像を収集している。
コレクションは 1万巻を超える。
貴重な未公開映像が残されていた。
「日本発見 東京都」。
テレビ局の企画だったが
お蔵入りとなった作品である。
当時 毎年7万人を超える若者が上京。
工場や飲食店に集団就職していた。
大食堂のウエイトレスになった女性たち。