日本代表の平井伯昌監督は→
重圧に押し潰されそうな大橋の姿を
間近で見ていた。
大橋には もう一つ 秘めた決意があった。
池江璃花子選手が病気で離脱。
女子のエースとして→
日本の期待を一身に浴びるさなかだった。
大橋にとって池江選手は
代表合宿でのルームメート。
練習も共にする特別な存在だった。
重圧を乗り越え ホッスーに勝つためには何が必要なのか。
50mプールを横向きに使い
ある特訓を始めた。
横に行くんだ。
平井監督が指示したのはターンの反復練習。
大橋とホッスーが
最後に対決した→
去年の大会。
やっぱ 速いよな ここはね。
ターンの際にバタフライで0秒3→
自由形で0秒2の差がついていたのだ。
パワーでは劣る大橋が追究したのは
膝の角度。
足の力が最も効率的に伝わる90度を狙う。
コースの長さを半分にしたことで…
2時間 ひたすら繰り返す。
これも地獄 地獄だわ これ。
脚もきついし
呼吸も苦しいしってなります。
大橋は 地道な努力を重ねることでしか→
確かな手応えはつかめないと考えていた。
VTRでも池江選手のこと
おっしゃっていましたけれども。
やっぱり 璃花子がいなくなって→
どれだけ璃花子の成績だったりこの 明るさが→
チームを引っ張ってくれてたかを
思い知って→
だからこそ 自分ができることは→
まあ いろんな人と コミュニケーションとって引っ張っていくこともそうだけど…
僕 もう駄目です。
あの 今 瀬戸選手がやってる→
練習見ただけで吐きそうになったんで。
あれは きついでしょう?
こういうきついトレーニングをしてると
最近 体がきつくなってきたところから→
何か…
はあ~!
その東京オリンピックの
前哨戦として臨んだ→
7月の
世界選手権ですけども→
予想もしないドラマが
待っていました。
7月下旬 世界選手権。
大橋は 得意の400mの前に200m個人メドレーに出場した。
ところが…。
(実況)今… 金メダル!
え…。
まさかの失格。
背泳ぎから平泳ぎへのターン。
1回しか認められないキックを2回打つという→
ふだんでは ありえないミスだった。
共に戦う日本チームも日程の半分を終え→
金メダル ゼロと 勢いに乗れない。
そんな嫌な流れを断ち切ったのがキャプテンの瀬戸だった。
(実況)右から3人目の瀬戸
残り5mだ 見えた 見えた!→
瀬戸大也 金メダル~!
200m個人メドレーで 金メダル。
競泳で初めて
東京オリンピックの代表に内定した。
そして 最終日 瀬戸と大橋は
本命の400m個人メドレーに挑んだ。
ところが 打倒カリシュに懸けてきた
瀬戸に 予期せぬ事態が起きる。
カリシュが不調により
予選落ちしたのだ。
前半から飛ばすリスクを負わなくても
金メダルに手が届くかもしれない。
振り払ったはずの心の甘さが
顔をのぞかせる。
攻めるか 守るか。
(スタートの合図の音)
(実況)瀬戸大也 スタートを
切っていきました。
選んだのは果敢な泳ぎだった。
バタフライ 1/2呼吸で積極的に飛ばす。
前半2分を切れるか。
(実況)トップで折り返していく。さあ 何秒で入ってくるかですね。
1分58秒台で折り返した。
(実況)自己ベストよりも 0秒25速いタイムだ。
しかし 最後の自由形。
(実況)最後のターンに入ってきた!ラスト50mに入った!
スピードが落ち 後続に迫られる。
(実況)リザーランドが追ってきているぞ!来たね~。
粘りきれるか…。
うわっ これ…。
(実況)金メダルへ 2冠へ 進んでいく!
リザーランド 追ってくる!→
瀬戸 逃げきった~!