2020/01/02(木) 05:25〜05:55 美の壺・選「書の道具」[字]

♪♪~
(草刈)ここかな。
これじゃないよね。
何を捜してるんですか? 草刈さん。
いやね 草刈家に 代々伝わる書の道具をね。
書の道具?
あのね 書道大会があるのよ。今度 町内でね。
おっ これかな?
えっ? 「封印」って書いてありますけど開けちゃっていいんですか?
大丈夫 大丈夫!
一筆一筆 丁寧にしたためられた手紙ぬくもりを感じますね。
筆で書かれた書は 心の内面をも
映し出すといわれる すぐれた芸術。
その道具である 硯や墨 筆などを飾り
愛でる事は→
「文房清玩」と呼ばれ 中国の文人の間で
洗練された趣味とされてきました。
番組の題字を手がける 書家の紫舟さん。
硯をはじめ こだわりの道具を使っていますが→
中でも お気に入りがあるそうです。
これは硯で 墨をする前に水を入れる時に使っています。
その時に とくとくとくと とても
ユーモラスな声でないてくれるんですね。
(とくとくとく)
制作する時に どうしても力が入りすぎたりとか→
緊張しすぎたりとか
すぎる事があるんですけれども→
力が ふっと抜ける
リラックスを与えてくれる道具です。
人の心に寄り添う 書の道具。


独創的なデザインや 秘められた知恵と工夫の数々を見ていきましょう。
自宅の一室で 文房具のギャラリーを営む
渡邉久雄さんです。
特に 気に入って集めているのが
中国の硯の名品。
その数 300以上に上ります。
硯の魅力は 石の美しさを生かした形やデザインが楽しめるところ。
このように あえて 天然の岩肌を残した
硯も珍しくありません。
名品の多くは 中国の南東部
端渓や歙州でとれる石で作られています。
表面が やすり状になっていて
墨の粒子を きめ細かく分解し→
滑らかにしてくれるからです。
この硯は ある生き物を模しているそうなんですが→
分かりますか?
土の中から出てきて 羽化する蝉は再生や復活の象徴。
中国では 貴重な工芸品に 蝉の装飾を施し
願いを託してきたといいます。
立体的な彫刻が施された硯。
左上に 黄色い点が見えますね。
これは 石紋と呼ばれる天然の模様。
太陽に見立て 周りにたなびく雲をあしらう事で→
「朝陽」を表現しています。
石紋を楽しむ とっておきの方法があるという渡邉さん。
なんと 硯を水の中へ。
確かに!石紋が くっきり浮かび上がりました。
この石紋は 人の眉に見える事から
「眉子紋」と呼ばれています。
石を より魅力的に見せるため


生み出された 硯の形。
硯の名作を再現し 失われた技術を
取り戻そうとする職人がいます。
古くは 1,000年前の硯まで
再現しています。
1,000年残る硯を作るという事が
大事だと僕は思っていまして→
やはり 使い心地がいいだけでは
ダメなんです。
石自体の美しさも際立って見えている。
青[外:38A15A6D80FE48EFB8C2B057999E87FB]さんが再現した 中国 清代初期の硯。
墨をする「墨堂」から 墨をためる
「墨池」まで ひとつながりの緩やかな曲面。
この絶妙なフォルムを どう作り出すかが
製硯師の 腕の見せどころだといいます。
今 挑んでいるのは 書の文化が栄えた
明代の硯。
起伏に富んだ 曲面の再現が
一番のポイントです。
材料となる石は 石紋が美しい反面
硬さには ばらつきがあります。
場所によって 力を加減しながら
削らなくてはなりません。
特に 角度が 急なくぼみの部分は
曲面を削り出すのが至難の業。
少しずつ慎重に彫り進めます。
仕上がりを確かめるために使うのがライトの光。
定規をあてて 何か印をつけています。
影の乱れから わずかに 彫り残した部分を見つけ出していくのです。
紙やすりを使って わずかな凹凸も

徹底的に削っていきます。
12時間後 磨き上がった硯。
石紋を優雅にたたえ堂々とした たたずまいに。
課題だった 墨堂から墨池への曲面。
複雑なカーブを描きながら滑らかに仕上がりました。
でも まだ完成ではないといいます。
お手元に届かれてからが この硯石が硯に変わった。
その硯自体が そこから
硯の旅が始まる訳なんですね。
僕の手元で完成ではなく…。