2020/01/07(火) 22:30〜23:20 プロフェッショナル 仕事の流儀「答えは、子どもの中に〜数学教師・井本陽久〜」[解][字]
価値観で 生徒を測りたくなかった。
担任を持つようになると その思いを
より強くする現実に直面した。
ある日 生徒の親から電話がかかってきた。
息子が 自殺を考えるほど追い詰められているという。
井本さんは 生徒に事情を聞いて驚いた。
その子は 「優しい優等生」という周りからの期待に応えることに→
疲れ果てていた。
井本さんは 世間の評価や価値観が いかに子どもたちを追い込むかを痛感した。
しかし 教師になって10年近くがたった時
痛恨の出来事が起きた。
井本さんが担任を務めるクラスでのこと。
ある生徒が 繰り返しトラブルを起こし大きな問題になった。
井本さんは強く責任を感じ 奮い立った。
なんとか立ち直らせ 無事に卒業させたい。
そう思うあまり
「勉強しろ」「素行を正せ」と→
これまで避けてきた言葉が
口をついて出るようになっていった。
次第に 生徒の目が冷めていくのが
分かった。
でも 言うのをやめられなかった。
1年後→
生徒は 学校を去っていった。
あれほど憎んでいた子どもたちを縛る評価や価値観。
それにとらわれ
押しつけてしまっていた自分。
井本さんは 大好きだった学校に
通うことができなくなった。
暗闇の中。
井本さんを救ったのは子どもたちの姿だった。
「かわいそうな子」
そんな世間の先入観など関係なく→
児童養護施設の子どもたちは
今を目いっぱい生きていた。
「できない子」
そうレッテルを貼られた生徒が→
チャイムが鳴ったあとも
ひたすら考え続けていた。
その輝きに
優劣をつけることなどできない。
頭では理解していたことが
少しずつ腑に落ちていった。
いつしか 心から思えるようになった。
そのままでいい。 そのままがいい。
今 井本さんは 毎週 母の元へと通う。
7年前 認知症を患い 施設で暮らす母。
いつも決まって 子どもの頃の話を聞く。
普通に育てたんだな。
井本さんは 携帯電話に
母の言葉を記録している。
今も心が揺らぐ時に見ては
背中を押してもらう。
「ありのままでいい」というのは
きれい事で無責任にも思える。
でも 井本さんの言葉は そう聞こえない。
それは今も 自分の中で闘っていてありったけの勇気を込めて→
伝える言葉だからだ。
それは 9月のある夜のこと。
まるで奇跡のような授業を
目の当たりにした。
その現場は 井本が学校以外に開いた
あの教室。
中学1年生から3年生まで
さまざまな生徒がそろう。
これ…
井本が出した問題は 図形の境界線を何筆で書けるかというもの。
例えば
この図の場合 4筆で書くことができる。
そこに どんな法則があるかを考えさせる。
早速 1人の生徒が法則を思いついた。
1本ってことね。
だが 別の生徒が穴に気付いた。
井本が出した この問題は 覚えた知識を
使って解けるようなものではない。
決まった解き方はなく
自分の頭で考え抜くしかない。
井本は いつものように
生徒を観察し ひたすら見守る。
自分の中から追いやったはずの
「できる できない」という評価や価値観。
今でも とらわれそうになることがある。
井本が想定していた答えに生徒たちがにじり寄る。
これは だから交差してるところが
ないから 引かなくていい。
だから8-1で…。
あ いいじゃん いいじゃん。
分けられた数-1-交点の数?
あっ…。
そして ついに その答えにたどりついた。
(生徒)エリアの数から1引いてそっから交点の数。
引く? 引くんだっけ?
(生徒)引く交点の数。
十字の数だね だからね。
(生徒)そうそうそう。
十字の数。
(生徒)Tは含めない。
その時だった。
別の生徒が待ったをかけた。
(生徒)まず赤で1画 赤で