デザインが施されていたのだ。
ビルスクヒルフォートから
4,000km離れた→
アルタイ地域に暮らしていた謎の人々は
スキタイ人だと判明した。
しかし 彼らは文字を持たず
記録を残していないため→
これまで詳しいことは分からなかった。
同時代のギリシャ人がこう 書き記している。
スキタイは
「野蛮な人々」だと見られていた。
ところが去年
驚くべき事実が明らかにされた。
ビルスクヒルフォートの周囲には→
35kmに及ぶ城壁があったことが分かった。
街の面積は ギリシャ・アテネの4倍以上。
ここは当時ヨーロッパ最大の都市だったのだ。
スキタイの繁栄を支えたもの。
(探知音)
それは 「鉄」であったことが
分かってきた。
ハロー ドクター。
スキタイの遺跡調査を行う日本人考古学者の村上恭通さん。
人類と鉄の歴史を
30年以上にわたって研究している。
この遺跡からは さまざまな鉄器が
大量に出土している。
おお…。
すごい。
古代の鉄は 金や青銅と比べて
さびて朽ちやすいため→
発見するのは非常に難しい。
当時 ギリシャなど 世界で使われていた武器や道具の多くは 青銅製。
鉄は 青銅に比べて 圧倒的な強さを持つ
最先端の金属だった。
それまで…
出土した鉄器はこの遺跡だけで2,000点以上。
同時代 これほど多くの鉄器が
普及していた国は→
世界に例がないという。
そして ビルスクヒルフォートから東に4,000km離れた アルタイ地域。
そこで見つかった あの黄金の品々。
それらも 鉄の工具で作られていた。
鉄のノミを使って 美しく切り出された
金の帽子飾り。
この布地には
直径1mmの金の玉が編み込まれていた。
ギリシャ人から 「野蛮な人々」と
見られていたスキタイ人は→
高度な黄金芸術の担い手だった。
新たな研究によって スキタイの人々は→
西のビルスクヒルフォートから
東のアルタイ地域に及ぶ→
広大な国を築いていたことが分かった。
その中で次々と見つかっているものがある。
鉄が 確かに伝わっていったことを示す
痕跡だ。
これまでに見つかった 「鉄の遺跡」。
それらを並べていくと→
ユーラシアの西から東へと延びる長い道が
浮かび上がる。
これこそ
人類に鉄をもたらした文明の道→
「アイアンロード」だという。
このアイアンロードが通っている場所はむき出しの岩山が連なる乾いた大地だ。
そこを切り開いていった スキタイの人々。
その困難な挑戦を支えたものがあった。
それは 馬を自在に操る道具。
実は 人類は長い間馬を乗りこなすことができず→
長距離の移動は不可能だった。
これを実現したのがスキタイが生み出した 鉄のはみ。
はみは
馬の前歯と奥歯の間にある空間に入れる。
それを手綱とつなぐことで→
人は馬に 自分の意志をこまやかに伝えることができた。
これによって 人類は初めて
馬を思いどおりに操り→
長時間 長い距離を行き来することが
できるようになった。
いわば 「移動革命」が起きたのだ。
スキタイに「移動革命」をもたらした鉄のはみ。
それは
前代未聞の軍事組織も生み出していた。
人類初の「騎馬軍団」だ。
歩兵が中心の時代に戦いの在り方を一変させていった。
その威力は
大国ギリシャやペルシャとの戦いで→
発揮されることとなる。
ギリシャは 青銅の武器とよろいを装備した 歩兵部隊の大軍。
対するスキタイは 馬に乗り
鉄の武器を大量に携えていた。
スキタイは 兵士の数や物量で
はるかに勝るギリシャを→
何度も打ち破った。
更に ペルシャも退けた。
ギリシャ人は 次のように書き残している。
♪♪~
ユーラシアの僻地に暮らしながら
人類の歴史を大きく変えた スキタイ。
何も語ることのないミイラの肩には