たくさんいます!
翌朝。
春子は 巣穴からなかなか出てきませんでした。
6時半。
春子は顔を出すと辺りを きょろきょろ。
あれっ 降りた?
(鳴き声)
春子が鳴き始めました。
ヒナが顔を出しました。(鳴き声)
鳴いています。
(鳴き声)
飛び出しました!
さらに… 続きます。
これが オシドリの巣立ち。
なんと生まれた次の日です。
しかも 巣の高さは5m。
落ちても大丈夫なんでしょうか?
ヒナは小さな翼を懸命に広げ
羽ばたいています。
これで落ちるスピードが抑えられます。
さらに ヒナの体を覆う ふさふさの毛。
まるでスポンジのように
衝撃を吸収するんです。
次々とヒナが出てきます。
カラスが狙っています!
危ない!
春子が追い払います。
ヒナたちは
慌てて春子のもとに駆け寄ります。
カラスは まだいます。
あっ! 春子が飛びかかります!
巣立ちが始まってから8分後。
14羽のヒナが 無事春子のもとに集まりました。
毎年観察している市民によると→
次は池を目指すといいます。
直線距離でも300m。
春子たちは 建物や道路が多い中を歩かねばなりません。
ヒナにとっては初めて見る外の世界。
お母さんより先に歩き出してしまいそう。
(カラスの鳴き声)
春子は身をかがめ 慎重に進みます。
ここからは 舗装された道を
歩かなくてはなりません。
あれっ?
ヒナが1羽 はぐれてしまったんです。
気付いた春子。 ヒナが
消えていったほうを向いて鳴きます。
(鳴き声)
合流しました!
今度は道を渡ります。
あ~ 自転車!
人が行き交う中を進むのは大変です。
あ かわいい。
危険を避け 道の端を歩く春子。
走り出しました。ゴールは目と鼻の先です。
巣立ちが始まって30分後
池に たどりつきました。
池の中は天敵に襲われにくく安心です。
ヒナが飛べるようになるまで50日母子は水辺で暮らすといいます。
しかし この時
カメラマンが異変に気付きます。
ヒナが11羽しかいません。
いつの間にか3羽減っています。
私たちは映像を見返しました。
すると この地点では14羽。
そのあと 排水溝の蓋の上を通ります。
そして この地点では11羽。
ヒナが格子状の穴から落ちていました。
都会に潜む「罠」です。
春子一家が池に到着した数分後。
(鳴き声)
ハルニレの巣から
ヒナが顔を出しています。
なんと まだ1羽残っていました。
もはや春子がウロに戻ることはできません。
あっ カラスが巣のすぐ上に!
(男性)あいてっ! やられた。
うわ~ なっ なんてこと!
ヒナたちが かわいそすぎますぞ。
いや~ 本当にそうですよね。
でも春子は11羽ものヒナを守ったんですよ。
これは
決して悪い結果ではないんです。
確かに春子お母さん強かった。
でも ちょっと待った!
オスの春彦は何をしてるんですか?
肝心の巣立ちの時には全然 見かけなかったですけど?
あ~ やっぱり そうきましたか。
実は 春彦と春子はもうオシドリ夫婦ではないんです。
はあ? 夫婦じゃない!?
はい。 オスは毎年ヒナが生まれるころには→
メスへの関心が
全く無くなってしまいます。
メスにアピールする
鮮やかな羽も抜け落ち このありさま。
夫婦関係はリセットされ
子育てに参加することもないんです。
あらら。
でも これから春子だけで→
たくさんいるヒナの面倒