規制がかかってくるかと思いますから
そういう場合にも
対応できるように
魔性の花に とりつかれた男がいる。
その花の名は ダリア。
幸せを運ぶ花。
男は こう呼ばれる。
そうすると
お一つどうぞってことになるわけ。
流通するダリアの
およそ7割を生み出した。
一流アーティストの作品。
パリコレの舞台。
鷲澤のダリアは今 世界を魅了している。
(手拍子)♪♪「お前来るかと」
♪♪~
秋田市の郊外。
周囲を山に守られるようにして
その花園はある。
鷲澤が 32年かけて造り上げた ダリア園。
700種類 7,000株のダリアが植えられている。
(取材者)おはようございます。
おはようございます。
朝8時 鷲澤がやってきた。
すぐに トレードマークの赤シャツに着替える。
お~い…
ぶっきらぼうだが 実は気遣いの人だ。
鷲澤のダリア園は単なる観光地ではない。
全国から生産者や市場関係者が訪れ→
新しい品種のダリアを品定めする
見本市の役割を担っている。
これだ これ これ。
育種家の仕事は 優れた新品種を生み出し生産者に提供することだ。
鷲澤の育種家としての仕事は
種まきから始まる。
これがね。
ダリアは人間の男女と同じく→
2つの異なる花が掛け合わさって
種ができる。
その一粒一粒から 子どものように
違った個性の花が咲く。
花の色や形 日もちの良さなど
バリエーションは無限。
良い品種ができたら
そのクローンである球根を増やす。
そこから 生産者が花を大量に栽培し
流通させる。
育種家が新品種を
生み出すために行うのが→
異なる花を掛け合わせる…
一般的な方法は 2つの花のおしべとめしべを こすりつける…
望む色や形になりやすく
出来 不出来の振れ幅が小さい。
しかし 鷲澤が行うのは…
自然のチョウやハチが花粉を運ぶのに頼る方法だ。
虫媒は自然任せのため 受粉せず
種が実らないリスクがある。
花の出来にもムラが多いが
思わぬものが生まれる可能性もある。
鷲澤は あえてそこに賭ける。
一生に一つ ヒットを生み出せれば誉れといわれる育種家の世界で→
鷲澤の実績は群を抜く。
鮮やかな色彩の「虹」。
フランスの国際大会で
グランプリを受賞した。
そして ダリアの概念を
変えたといわれる…
圧倒的な存在感を放つ巨大な花びらと
陰りを帯びた色は→
これまでにないものだと絶賛された。
ダリアはかつて 主に仏壇に供えられる地味な存在にすぎなかった。
それを鷲澤は
イベントや結婚式などハレの日を彩る→
人気の花へと押し上げた。
まいた種が芽を出した。
苗を大事に育てるため
1本ずつポットに移植する。
それを一旦 日陰に置き→
徐々に日光に当てて丈夫に成長させ再び畑に植え直す。
雨上がりの ある日。
鷲澤は はだしだった。
前日の雨で緩くなった土。
長靴で深く踏み込めば根を傷めるおそれがあるという。
こうした我流のやり方は
40歳にして この道に入って以来→
独学で身につけてきた。
この夏は記録的な猛暑。
畑は乾ききっていた。
苗がしなびているにもかかわらず丸3日 水をやっていなかった。
水をやりすぎると茎が弱くなるため→
4日に1度と習慣づけて育てている。
そのかわり 雑草は毎日欠かさず抜く。
どんな小さな雑草も見逃さない。
雑草を抜き続けた指は変形し 毎朝痛む。
それでも鷲澤は連日30℃を超える暑さの中→
朝から晩まで雑草を抜き続けていた。
雨の日も 風の日も 手が痛む日も。
鷲澤は ダリアのそばを離れない。
…しかなかったから 話しかけてきたよ。
鷲澤さんは 新たに生み出したダリアに