2020/11/29(日) 21:00〜21:50 NHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」[字]
まともに食事もとらなくなっていく。
伸一さんは 生きる気力そのものを
失っているかのようだった。
社会 家庭。
二重に追い詰められその果てに死んでいく人たち。
それは 自業自得なのかと
問い続ける現場がある。
千葉県で ひきこもりの
支援をしている田中君[外:9F993F913CD0614A3A965D74E0F4C8D1]さん。
田中さんには つらい経験があった。
訪問を続けていた 48歳の男性が→
去年 亡くなったのだ。
本人の気持ちよりも仕事につなげることを優先するあまり→
男性は より心を閉ざしていった。
その死以来 田中さんは関わり方を変えようとしてきた。
この日 訪ねたのは15年近く
ひきこもる45歳の男性。
こんにちは。
男性は ひきこもり続けるうちに心身の状態が悪化。
無気力になり
一切の支援を受けようとしない。
田中さんは あえて仕事や支援の話を
切り出すことはしなかった。
何かを強いるのではなく
本人の意欲に つながる糸口を→
時間をかけて 見つけようとしている。
田中さんが何度も面談を重ね少しずつ意欲を取り戻してきた人がいる。
お気遣いなくしてください。
あの 面談も この前したんですけど…。
佐藤 誠さん 47歳。
20年以上 ひきこもってきた。
高校を卒業後
自動車の整備工場に就職した。
しかし 同僚と うまく関係を築けず孤立し
5年で退職。
ひきこもるようになった。
家族の世話になり続けるうちに→
将来を悲観し
命を絶とうとしたこともあった。
今 田中さんが進めているのが
職場でも家でもない居場所の確保。
あ 大丈夫です。
は~い。
自宅の近くで待ち合わせをして
支援員が送迎をする。
一緒に過ごすのは
同じように社会で挫折を経験した人たち。
週3日 ここで過ごしながら
地元の社会福祉法人の手伝いをする。
この日は 寄付された漫画や本を
ネットで販売するための作業。
疲れたら休憩し ノルマや競争もない。
ゆっくりと お互いを知っていく。
ああ… そうですか…。
自宅での面談中佐藤さんが家の敷地に案内し→
ある思い出を田中さんに話し始めた。
やってたんだ。あ~。
ああ そうですね。
かつて父親の畑だった場所。
いつか自分も やりたいという。
どうしようもなくなって…
周囲との関わりを拒み→
最後は 生きることを→
諦めたかのように見えた兄。
弟の二郎さんは この日→
ある女性に会うために東京を訪れていた。
いえいえいえいえ。 お話を伺ってちょっとびっくりしましたけれど。
伸一さんが 大切にとっていた2通の手紙。
送り主は 精神科の診療所で→
ケースワーカーとして働いていた
この女性だった。
「牧岡伸一様。→
金曜日は 本当に久しぶりでしたね。→
よくたずねて下さったと
内心は うれしかったです」。
「病院へは行かれたでしょうか」。
「お会いしてからず~っとあなたのことを考えていました」。
家族にも心を閉ざしていた伸一さんは→
1時間半離れた診療所を一人 訪れていた。
女性は 診療所に初めてやって来た時の
伸一さんの様子を→
今も覚えていた。
女性は伸一さんを気にかけ手紙や電話でやり取りを続けた。
しかし 伸一さんとの連絡は
やがて途絶えてしまったという。
兄は生きようとしていた。
最後まで。
世間様から
褒められるということもなく→
自身 家庭を築くということもなく→
こう あまり生産性という面では→
社会に寄与しなかった人ですけれども→
ただ まあ弟の身からすれば→
それで生きる価値がなかったとは→
思いたくはないので どういう形であれ→
命は 長らえてほしかったという気持ちは
ありますね。
♪♪~
「生きていても 価値がない」→
そんな思いが広がる社会に