この美しゅうて 長~い鳴き声が→
何や 物好きの間で
どえらい人気らしいわ。
♪♪~
何見てんねん。 いやらし。
次!
ここは町で大きなガラス工場を経営している→
峰岸社長のお屋敷です。
今日は ここで観賞用の鶏の品評会が開かれております。
うわあ…
何や分かれぃんけど ものすごいな。
流星丸が貧相に見えるわ。
だ… だだだ大丈夫や 大丈夫や。
社長 どないです?
ここまでのもんは なかなか おまへんで。
(峰岸)あきまへんな。
次!
次!
おい! おい! おい ちょお待て おい!
(騒ぐ声)
いや すんません。 社長はんもうちょっと よう見てもらわな→
うちの流星丸のよさは分かれへんで。
鶏冠の大きさ 色 形 どれも並。
羽の色艶も さほど ええことない。
素人が育てるとな あななんねや。 なあ。
いやいや…
まだ鳴き声 聞いとらへんがな。
長鳴きかい。
鳴かしてみい。
よう聞いといてや。→
さあ 流星丸… 鳴け。
鳴け。
(テルヲ)あれ…。
今日は 慣れんとこで
ちょっこと硬なってんのやろか? なあ。
あっ せや。 千代 お前 鳴け。
はっ? はっ? 何言うねん。
つられて 流星丸も鳴くはずや。
嫌や そね恥ずかしこと ようしやんわ。(テルヲ)何でも好きなもん食わしたる。
コケコッコー。
聞こえるか!
コケコッコー!
(テルヲ)もっぺんや!
もっと流星丸の気持ちになれ!
コケコッコー!
おいおい。 おい おい おい。 おい。
もうええ。 わしも忙しいんや。
次!
(騒ぐ声)
あの…。
ほんまに ええのやろかな?(峰岸)はっ?
この子 鳴き声だけは
ほんまに すごいんやで。
何でか知りたい?
何でや。
うっとこ 貧乏やさけ
まともに餌やられやぃんねん。
せやさけ この子は いつも
おなか減ったって 大声で鳴いとんねん。
この子の鳴き声は
生きるための鳴き声やさけ。
せやのにな 見た目だけで判断するやて→
ガラス工場の社長さんや何や分かれぃんけど→
おっちゃんの目は曇りガラスやな。
このコマンジャコちこっと言うてくれるやないか。
ええもん見したるわ。
どや きれいやろ。
お母ちゃんの形見やねん。
おっちゃんの工場でもこねなん作ったらええのに。
社長。
見せて 見せて。
はあ~…。
お前… サエの子か?
社長… サエのこと知っとんのけ?
知っとるも何も あの子はな→
ちょうど あんたと同じぐらいの頃は
うちで奉公しとったんや。→
一生懸命 働く子やったわ。→
16かそこらに辞めたあとはしばらく顔見せんかったけどな…。
亡うなる ちょっと前辺りに
ひょっこり現れて→
このガラス玉 買うて帰りよったんや。→
娘にやる言うてな。
(峰岸)お月さんに似た
珍し色のガラス玉やったさけ→
よう覚えとる。
そうか… お前 サエの子か。
おおけに。
ええんけ それだけで。残りは 帰ってから よばれる。
ヨシヲも楽しみにしとるさけ。
勝次にも この前貰た分 返さな。
せやな。 たんとあるしな。
これも何かの縁や。 なあ。
流星丸 買わしてもらおかい。
お母ちゃんのおかげやな。
そねやな。
さっ 行くで。
♪♪~
なあ お父ちゃんは お母ちゃんのこともう好きやないんけ?
ん? 好きやない。