47年?
半世紀近く たっているのに
全然 くたびれていません。
信一さんの作る籠は
丈夫で型崩れしないと評判なんです。
あ こちらなんですね。
素材は あけびのつる。
生命力あふれる あけびは
寒さの厳しい この辺りの山にも→
広く自生しています。
信一さんがあけびのつるを採るのは 春と秋の2回。
蜂に刺されたり
鋭い枝先で傷ついたりしないよう→
しっかり準備します。
いいあけびがあるのは適度に光の当たる低い雑木林の中。
あけびは地面を はうように
伸びていました。
夏の暑さを乗り越えた そのつるは
弾力を持ち しなやかだといいます。
根元から切らず10センチほど残します。
その年の気候に合わせて採る場所を変えているといいます。
(中川原)ここにも…
ここにも… ここにも。
(中川原)今年は比較的 いいのかな~。
8の字に巻いて持ち帰ります。
採ったばかりの つるには
葉っぱや芽がついています。
それを丁寧に取り除くのは
惠美子さんの仕事。
当たるんですよね。
手に引っかかるんです。
信一さんが 出稼ぎで
千葉県に来た時に出会い→
結婚して50年近く。
初めは あけびの「あ」の字も知りませんでした。
今では籠作りに欠かせない
もう一人の職人です。
10日間 天日で干し→
室内で2か月以上 乾燥させます。
しっかり水けを抜くと
芯の中まで かたく締まります。
編んだ時に緩まなくなるのです。
編む前には 干したつるを→
一昼夜 水につけます。
乾燥させたまま編むとつるの表面が破れてしまうんです。
奥羽山脈の伏流水をたっぷりと。
かつて この地方では 冬の時期→
農家の人々が
あけびや山ぶどうなどのつるを使って→
道具を編んでいました。
それを山の仕事や農作業で使っていたのです。
そんな籠に持ち手を付けて
買い物などでも使えるようにしたのが→
信一さんの父 十郎さんでした。
あけびのつるを使った籠作りの名人といわれました。
その父のもとで修業を始めた信一さん。
それから半世紀以上。
自分の理想とする籠の形が
見えてきたといいます。
その膨らみ どのように出すのか。
籠の下の方は きつく締めるように…。
真ん中辺りは
緩く絞って膨らみを出します。
木型を使って籠を編む方法もありますが→
自分の感覚だけで編み込んでいきます。
それが ふっくらとした形に仕上げる
一番の方法だといいます。
籠の本体が出来上がったところで…。
お~!
(中川原)これは 俺は…
まっすぐだからまっすぐさけるんですね。
これで持ち手の部分を巻いていきます。
持ち手は とりわけ消耗が激しいところ。
さいた つるの平らな面を
しっかりと巻きつけていきます。
あ~ 完成ですね。
うわ~。
こんな間近で見ると もう いや~…。
籠が もしできれば…
♪♪~
山の恵みを頂く。
見過ごされていた
素材の良さを引き出す。
自然や素材への感謝が
いっぱいに詰まったバッグでした。
♪♪~
2020/11/29(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・東京
イッピン・選 コレクション「バッグ」[解][字]
麻の紙でできたトートバッグ。シルクの特殊な糸を使って編み上げたバッグ。そしてアケビのつるで編んだバッグ。どれも自然の恵みを受け、伝統の技を駆使して作られたもの。
詳細情報
番組内容
これまで「イッピン」で紹介してきた、ユニークなバッグの中から3つを再編集。栃木県鹿沼市は、日本有数の麻の産地。古代に作られていた麻の紙、「麻紙」をよみがえらせ、作り上げたトートバッグ。シルク産業の盛んな山形県鶴岡市からは、シルクの特殊な糸で編み上げた、豊かな風合いのバッグが出来上がるまでを。秋田県横手市からは、山に自生するアケビを採取し、そのつるを使って編み上げた素朴でバッグの制作の様子を。
出演者
【リポーター】鈴木ちなみ,黒谷友香,生方ななえ,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化