2020/12/06(日) 05:15〜05:45 桂文珍の演芸図鑑 選「高橋尚子 桂宮治 春風亭一之輔」[字]
「誰に聞いてんだ」。
「はわわわわ」。
「うん。 う…→
ああ おいし」。 「おいしいの それ。
一体どんな味がする?」。
「ああ ちょうど
豆腐の腐ったような味がするんだ」。
(拍手)
♪♪~(出囃子)
♪♪~(出囃子)
(拍手)
まあ そういうわけでございまして→
いろいろ世の中もですね混とんとしておりまして→
噺家の方も まあ あの~→
寄席が 随分お休みで仕事がなくてですね→
ようやく ついこの間
再開しましてですね→
で ソーシャルディスタンスとか
いいながら→
寄席は
300人ぐらいの定員なんですけども→
今 100人ぐらいに抑えてまして
限定100名様ですよ。
そしたら 昨日
28人しかお客さんいなくて→
「限定」っていう言葉を
辞書で調べましたけどもね。
ええ よく分かんないことは いろいろ
世の中ありますな ええ。
泥棒が 一人
裏長屋に入ってまいりまして→
ちょいと見るってえと そのうちの戸が
これぐらい開いてまして。
「あれ 開いてる。
誰もいねえのかな え?→
土間で何か燃えてる? あれ 煙か?
蚊いぶしかね あれ。→
何だ あら。 誰もいねえのかな?→
ちは~。 いませんか? ヘヘ。→
ありがてえ 入っちゃおう ね。 ヘヘヘ」。
(せきこみ)
「えらい煙だ。 ゴホ ゴホ。→
何だこれ。 蚊いぶしじゃないよ これ。→
板っ切れ燃やしてんじゃねえか。
何だ これ。→
こんなもんで
蚊が嫌がるわけねえじゃねえか。→
火事になったらどうすんだ
こんな燃えちゃってよ。→
俺が入ってきたから
よかったようなもんの→
カビくせえね。
きったないうちなんだよ。→
ま… 真っ暗でよく分かんないけどね
こんなうちに 金なんか…。→
そうじゃねえ。
親分が言ってたよ。→
汚えうちこそ
わざと そういう暮らしを見しといて→
陰に回って金ためてるもんだなんてことを
教わったことあるわな。 ハハッ。→
そうと決まったらね ちょいと上がってね
かっぱらって ずらかっちゃう。 失礼…→
ああ! あたた… あ痛い あ…。→
うちん中 落とし穴があるな このうち。→
足 めり込んじゃって いてえいてえ。→
何だ? 畳が敷いてないよ ここ。何か 根太板だけ。→
ど… ど…。 ああ あそこに寝てるよ。→
のんきな野郎だね おい。脅かしてやるか。 へっ。→
おう。 起きろよ。
おう! 起きろよ!」。
「起きてるよ!」。
「わっ! はっ…。→
え… え? うん?
起きてるのか」。
「うん。 お前が入ってくんの
ずっと見てた」。
「見てた?
見てて黙ってることねえだろ。→
あ~とかキャ~とか
何か言ったらどうだい」。
「いいじゃねえか黙ってたって
このうち 俺のうちだし。→
あのね ずかずか上がってくると危ないよ。
暗くて分かんねえんだからさ。→
あの穴 落っこったろ。 ドジ」。
「何で あんなとこ穴開いてんだよ」。
「いやさ うち 長屋の どん詰まりだろ?→
蚊がさ 集まってきてさうるさくてかゆくて眠れねえんだよ。→
蚊いぶし買おうと思っても
金がねえから買えねえしね。→
何か 煙たこうかなと思って
あそこ 畳上げて→
根太板剥がして 土間で燃やしてたの」。
「随分燃えてたよ」。「うん 知ってる。 見てたからね」。
「危ないよ お前
火事になったらどうすんだ」。
「いいよ別に 借りてるうちだしね。
俺んちじゃねえから ここね。 フフッ」。
「そういう了見 よくないよ。→