桜ちゃんはこれから どうするんだべ?
ほうだね。
どうしたらいいんだろう。
この2年 お店の仕切りや
お母さんの看病の合間に→
細々と 作曲のまね事は
しとったけど→
大した事は できとらん。
ほいでも音楽を忘れた訳じゃないんだ。
できれば 何か 仕事にするなら
音楽に こだわりたい。
冬吾さんなら どうする?
(冬吾)桜ちゃんのお母さんは確か 学校の先生だったな。
子ども達に
音楽 教えてみたら どんだ?
子ども達に?
んだ。 加寿子も亨も→
桜ちゃんのピアノ聴くのが
大好きなんだなあ。
桜ちゃんが 音楽を好きだから→
その気持ちが伝わって楽しくなるんだな。
そったな仕事なら 悪くねえべ。
♪♪~
隣組長さんから
就職先 世話されちゃった。
郵便配達婦 やらないかって。
郵便配達婦?
私 やってみようかと思って。
いいよね? 冬吾。
もちろんだ。
それより 桜子。
あんたも このままだと
女子挺身隊に とられちゃうよ。
どうするの?
私は 代用教員になりたいと思っとる。
(笛子)代用教員?
西野先生に お願いして→
就職先 探してもらおうかと
思っとるんだ。
ほら。 今は どこの国民学校も
教員不足だっていうし…。
そう。 教師にね。
反対?
ううん。 今みたいな世の中で
人に ものを教えるのは→
大変な事だと思うけど。
そうだよね。
うん やるだけ やってみりん。
ほいだから 八州治さん。うん。
子ども達の世話
よろしく頼みますね。えっ 俺が?
冬吾は この足のおかげで
徴用免除になって→
かえって これからは
集中して 絵が描けそうだで→
子ども達が
邪魔にならないように→
外に 連れ出してもらえると
ありがたいわ。
そったな事 人に頼むんでねえ。
俺は絵を描きたい時に 描くはんで。
ほいだけど せっかく八州治さんが
おってくれるんだから。
うん。 うん そうだよ。
ああ いいよ いいよ。
子ども達の面倒
昼間 俺が見るからよ。 なっ。→
じゃあ これから よろしくね。
おじちゃんとね。 ヘヘヘヘ。
♪♪~
(マサ)<空襲に遭って以来→
冬吾は 一枚も
絵を描いていませんでした>
♪♪~
(西野)思い出すわ。あなたが うちの学校で→
滝 廉太郎の「花」を
ジャズ調で弾いた時。
先生には
ご迷惑をおかけしました。
その桜子さんが 今度は
人を教える立場になるのね。
私みたいな者でも
教師になれるでしょうか?
もちろん 資格は 十分にあるわ。
だけど その前に あなたの覚悟を聞いときたいの。はい。
先生。 先生が
お辞めになった時の事情に→
私は 今でも責任を感じています。
だけど あれから 教育の現場は少しも 変わっていません。
国民学校で教える科目は
音楽だけじゃない。
修身や国語も あるのよ。
桜子さん。あなた それに耐えられるかしら?
私が 子ども達に
教えてあげたいのは→
音楽だけじゃありません。
「生きてるのは楽しい。すばらしい事なんだ」って事を→
教えてあげたいんです。
♪♪~
私は 2年前