延四郎！
（シズ）わてと あのお人は→
昔 確かに恋仲になりかけたことがおました。
（延四郎）これを シズに…→
女将さんに渡してくれへんか。
えらい長なって すまなんだな。
（千代）あの…。
すんまへん。
ほんで 結局 これ預かってきてしもて。
せっかくやけどな ほかしといて。
♪♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪♪「まだ何か足りない気がした」
♪♪「これは夢じゃない（夢みたい）」
♪♪「傷つけば痛い（嘘じゃない）」
♪♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪♪「転んでも ただでは起きない」
♪♪「そう 強くなれる」
♪♪「かさぶたが消えたなら」
♪♪「聞いてくれるといいな」
♪♪「泣き笑いのエピソードを」
♪♪～
ご寮人さん。
あの… 読みはるくらい
ええのと違いますやろか？
あんた さっき言うたわな。
ええ人や。
あんたと おんなじくらいの年の頃や。
岡安継ぎますって お母ちゃんに言うてお茶子修業 始めたんやけど→
何やっても うまいことでけへん。
お茶子なんか辞めたる。後継ぎなんてごめんやて思た時にな→
あの人が 言うてくれましたんや。
ちょっとくらい鈍臭い方が私は ほっとするて。→
そないな子が頑張って
一人前になっていくのを見ると→
自分も励まされるって。
ありがたかった。 助けられた。
あの人が いてはれへんかったら
今のわては あれへん。
わてにとって あのお人は 恩人なんだす。
せやさかいな 読んでしもたら→
会わんといてられへんよう
なってしまいます。
わてのことより あんた
年季が明けたあとのこと→
ちゃんと考えなはったか？
それは…。
人のこと気ぃもんでる場合と
違いますやろ。
へえ。
この話は これで しまいだす。
♪♪～
（熊田）本日 千秋楽でございます。→
早川延四郎最後の艶姿 とくとご覧あれ。
（みつえ）行くで。へえ。
大体 何で あんたと
踊りのお稽古 行かなあかんの。
しょうがおまへん。 明日に組見控えて
ご寮人さんも旦さんもお忙しいのだす。
子供やあるまいし 我慢しなはれ。
「我慢しとくれやす」や。
組見というのは 役者の後援会などが
団体で芝居を見ることです。
組見を受けた芝居茶屋は→
その前の日から 火事場の大騒動みたいに走り回ることになります。
（トランペットの音）
下手くそ！
（福助）何やね いきなり。
あんたんとこのお茶子がけったいな噂 流してくれたせいで→
うっとこ えらいことなってますねんで。
どないしてくれんの。
僕のせいちゃうわ。
福助 あんた 福富の跡取りやったわな。
そないなこと知らん。
僕は これで生きていくさかい。
（トランペットの音）
あんた その腕前でよう そないなこと言えんな。
芝居茶屋は もう のうなるで。
どういうこと？
この１０年かそこらで
どんだけの芝居茶屋が潰れた思てんの。
前は一日中やってた芝居も
今は昼と晩に分かれて短なったやろ。
お客さんは 茶屋を通さずに
芝居だけ見て さっと帰りはる。→
芝居茶屋いう商いは
もう時代に合うてへんのや。
嘘やろ… のうなりますの？ 岡安が？
（みつえ）のうなれへん。（福助）のうなるて。 時間の問題や。
岡安が そない簡単に
潰れるはずあれへん！
うちは
お母ちゃんみたいな女将になんねさかい。
この あほ！ 何や こないなもん！
ええ～っ！
えっ ちょっ… おい 拾うの手伝え！
（福助の泣き声）
（福助）僕のトランペットやで。
なあ どこ行くんや どこ行くんや！なあ！
ええんですか。