♪♪~(テーマ曲)
♪♪~
(冬吾)ああ ありがとうな。
(桜子)一体 どうしたんですか?
「人に追われてる」って。
とんでもねえ 難儀な目に
遭ってるんだ。
(杏子)難儀っちゅうと?
夜も昼も 間なしに働かされてるんだ。
笛子が雇った お手伝いに
見張られてな。→
食ってる時と
便所さ行く時以外は→
ず~っと
絵の前に座らされっ放しでさ→
牛馬にも劣る暮らしだよ。
どうしてほんな事になっちゃったの?
次から次に 笛子が
絵の注文 取ってくるからだ。
画商達が何人も 居間に集まって→
日がな一日 絵が出来てくるのを待ってるんだ。
笛子と しゃべったり
マージャンしたりしながらな。
マージャンって…。
お姉ちゃんも やるのかん?
ねえ 奥さん
私が勝ったら 先生の絵を→
優先的に 回してもらえますかね?
(笛子)考えときましょう。
よ~し 頑張るぞ。
あっ あっ ロン! ロン!
えっ?
あっ 大三元!
大三元?
(吉田)さすが 奥さん。
天才画家の奥さんともなると
入る手が 常人と違いますなあ。
(冬吾)笛子は 絵を買いに来る
連中の事が 大好きなんだな。
俺の事を 日本一だとか→
百年に一度の天才だとか持ち上げて→
笛子の事は 「俺を ここまでにした
奥さんが偉い」だとか→
「美人」だとか「頭がいい」とかって
おだてまくる。
すっかり 乗せられて
いい気持ちになってまって。
あの バカ女房が!
♪♪~
ここでいい?
ああ。
こったなとこが
一番 気が休まるな。
全くなあ。 戦争が終わって
ホッとしたっつうのに→
俺にとっては 今が 戦争だはんで。
お姉ちゃんに連絡しんで いいの?
あいつには
絶対に しゃべらねえでけれ。
あいつは 俺の事を→
ほっとけば 絵が出てくる印刷機か何かと勘違いしてるんだ。
今 あいつに捕まったら
俺は 息の根が止まる。
(ドアが開く音)
(ヒロ)いらっしゃいませ。
(ヒロ)達彦君? うわっ!
(達彦)ヒロさん。すっかり 御無沙汰して。 ごめん。
そのとおりだ。
いや~ 会いたかった!いや~ 会いたかった。
ご無事で…。
あっ そうだ そうだ。 コーヒーがある。
本物。 本物のコーヒーがある。
飲むな? 飲め。
ほら 座って 座って。
今 いれよう。
変わってないな。
あっ レコード かけていいか?うん。
♪♪~(レコード)
初めてだ。(ヒロ)えっ?
復員してから
音楽を ゆっくり聴くのは。
(ヒロ)どうだ?
昔を思い出すよ。
♪♪~
帰ってきてから何もかもが 遠くに感じるんだ。
音楽も 人の話してる声も。
有森と ここでピアノを弾いとった自分も。
♪♪~
どうぞ。ありがとう。
♪♪~
桜子ちゃん秋山さんのバンドの誘いで→
名古屋の進駐軍のクラブで
ピアノを弾くよ。
そうか。
なあ。
聴きに行ってあげたら どうだ?
もう パスは とってある。
♪♪~
こんにちは。(ヒロ)いらっしゃい。
達彦さん…。 来とったんだ。