（柝の音とチンドン太鼓の音）
（黒衣）東西東西！
（千代）いずれのお方様方もご機嫌よろしゅう。
１週間ぶりに
皆様のご尊顔を拝しまする。
竹井千代でございます。
よっ 「おちょやん」！２週目。
♪♪「涙色したブルー こぼれて ひろがって」
先週からスタートしました「おちょやん」。
毎週土曜日は 私 黒衣が １週間のお話を
ええとこ取りでご紹介さしてもらいます。
それでは第２週の始まり始まり～。
大正５年 千代ちゃんは 奉公先である大阪・道頓堀にやって来ました。
夢とちゃうんけ？ 道頓堀 ええとこや～！
聞かんか～い！浮かれてしまうのも しゃあないわ。
何せ道頓堀は
多くの芝居小屋がひしめく娯楽の中心地。
ここが おまんの奉公先
芝居茶屋の岡安や。
（節子）ごめんやっしゃ ごめんやっしゃ！
やい われ 待たんかい！ 何しくさんねんこの どあほう！ すかたん！
≪（シズ）すかたんは あんただす。
ご寮人さん。
奉公先の芝居茶屋では
ごひいきのお客さんの世話をする→
お茶子と呼ばれる女性たちが
働いておりました。
よろしゅうお頼申します。
店先で大声張り上げて。しかも あないな汚い言葉で。
向こうが 先 ぶつかってきおって…。
（シズ）何だす？
えらい賑やかなこったすなあ。
表まで丸聞こえだすがな。
（シズ）すんまへん お母ちゃん。
まあ ええやないか。→
しばらく様子見たり。
ほんまに！？
さっき おみくじ引いたらな
「待ち人来る」て書いたったしな。
それ きっと うちのことやわ。
あんた ほげたが達者やなあ。
口が達者っちゅう意味やね。
ほげ…。しょうおまへんな。
ひとつきだけ置いたげます。
代わりの子 見つけといてんか。
あんたは それまでの つなぎや。
お～ 怖～。
おちょやん相手に
こない厳しいせんかてええのになあ。
何で うちの名前 知りよるんけ？
お千代やんて。
ハハハ そやない そやない。
ちっちゃい女中見習のことをおちょぼとか おちょやんいいますのや。
ひとつきの間に
しっかり仕事覚えたら→
ご寮人さんの気ぃも
変わるかも分かれへん。
せえだい お気張り おちょやん。
はいっ！「はい」やのうて 「へえ」。
へえ！
こうして 千代ちゃんの道頓堀での日々が幕を開けました。
（かめ）遅い！ もっと はよう！
はよせな 日ぃ暮れてまう。
そんな中 人気の喜劇一座 天海天海一座が
なじみの岡安にやって来ます。
（シズ）おいでやす。
一座を率いるのは座長の 初代 天海天海。
息子の市松でございます。
かかの乳でも飲むか。
いらんやろ それは！
何でやねん！ 飲まへんわ！
息子の一平も 父の跡を継ぐべく
幼い頃から舞台に立っておりました。
はよう成仏してください。
（拍手と笑い声）
何や お前 もっと しゃきっとせんかい。
すんまへん 誰か いてはりませんか？
（シズ）どないしはりました？
女将 すまんけど一平に 布団ひいたってくれへんか。
寒気する… 晩は無理や。
（天海）ほんま情けないやっちゃのう。
親が亡うなっても 舞台に穴あけへん。
それが役者っちゅうもんじゃ。
だあっ！
あ～！ 喉カラカラやったわ。
元気そやな。
当たり前や 仮病やし。
仮病！？
俺は 好きであいつの子に生まれたんやない。
せやのに
２代目や何やと勝手に決められて→
おやじは芝居の時以外は
ず～っとお酒飲んで→
あとは 女 女 女！
もう ほんま しょうも…。
しょうもないな！
なれなれしいな 自分。
うちら もう親友やな。
勝手に決めんな。
俺は こう見えても 天海天海の息子やで。