音楽家になりたいっちゅう大きな夢を…。
ねえ 達彦さん。
小さい頃からの夢を実現して仕事にできる人が→
世の中に どいだけおると思う?
私は やるだけの事は やった。力が足りんかっただけだよ。
ほいじゃ 私 帳場戻るね。
♪♪~(ピアノ)
♪♪~(ピアノ)
<翌日 達彦は 「名古屋で→
これからの味噌の統制について
会合がある」と言って→
不意に出かけていきました>
<そして その翌日の事です>
[TEL]
はい 「山長」でございます。
森山味噌さん
御無沙汰しております。
主人は 味噌の統制についての
会合があって→
名古屋に出かけておりますが。
あっ いえ…。
あ… 私の勘違いで
申し訳ありません。
主人に そう伝えておきます。
ありがとうございました。
失礼します。
野木山さん。(野木山)はい。
達彦さん 名古屋で味噌屋の会合に
出とったじゃないの?
えっ? は は… はあ。
森山味噌さん→
「名古屋で 味噌屋の会合なんて
ない」って言っとった。
一体 どういう事だらあ?
さあ どういう事だらあ?
怪しいね。
いえ 私は 別に。
嘘つきに なりたくはない…。
(達彦)ただいま。
あっ 大将! お帰んなさい。
桜子 お茶いれてくれるか。
♪♪~
達彦さん。 味噌屋の会合に行っとらんかっただね?
♪♪~
一体 どういう事?いや 味噌屋の…。
男には 一つや二つの隠し事は
ありますよ。 ねえ 大将。 ねえ!
隠し事?
やめてくれよ 野木山さん。
そんな事 言ったら
俺が 何か 間違いでも→
起こしとるみたいじゃないか。
(野木山)間違いなんて そんな!
大将は そういう方じゃ
ありませんよ。 女将。
大将は 女将一筋!
それは この私が 保証します。
ちゃんと 話してみん。 一体 何?
♪♪~
東京で 西園寺先生に
会っとったんだ。
西園寺先生に?
事が うまく運んだら→
お前に知らせて
喜ばせようと思ってな。
それまでは ないしょにしとこうと
思ったんだけど。
何?
「お前の作品を発表する機会が持てないか」って→
お願いしてきたんだ。
私の作品? 私の作曲したものを?(達彦)ああ そうだ。
あ… そんな! 恥ずかしいよ。
そんな事ないよ。
俺 自分で 弾いてみて
えらく いい曲だと思ったんだ。
駄目だよ あんなの。
つまらんもんだよ。
お前 自分の曲に
誇りが持てんのか?
そりゃ 私にとっては→
一つ一つが いとおしいし大切なものだよ。
ほいでも 人から見たら→
あんなもん石ころみたいなもんだよ。
達彦さんに そこまでしてもらって
ありがたいと思う。
ほいでも 西園寺先生に
そんな お願いするなんて→
どう考えても おこがましい。
ご迷惑に決まっとるわ。
先生は 「やってみる」って
楽譜を預かって下さったよ。
そりゃ 岡崎から わざわざ
訪ねてきて 頼まれたら→
先生だって
「嫌だ」とは 言えんだら。
私 先生に 電話する。
電話して 謝るわ。
「余計な事で お手を煩わせて
申し訳ありませんでした」って。
待てよ!