なかなか 友達も できんくて。
何をしてやったらいいか
分からんけど→
せめて 見えんくなる前に→
父親の絵を しっかり記憶に刻ませてやろうって。→
それには 展覧会 開くのが
いいんじゃないかって。→
冬吾とも話し合ったんだわ。
(加寿子)桜ちゃん 遊んで!
(幸)ピアノ弾いて!
そうだ! 弾いて 弾いて。ねっ いいでしょう?
いいよ。
♪♪~
亨ちゃん。
おねえちゃん これからあっちの部屋で ピアノ弾くけど→
聴きに来ん?
聴きにおいでよ。 ねっ!
♪♪~
旅人が来ると北風が吹いてきました。
「お前の外套を吹き飛ばしてやるぞ
ビュ~! ビュ~!」。
♪♪~(ピアノ)
吹き飛ばしてやるぞ~!(2人)キャ~!
北風の次は 何の番だ?
お日様!
そうだね。
「お日様は 旅人の体を温めて外套を脱がせようとしました」。
♪♪~(ピアノ)
冬吾さん。
(冬吾)ああ 桜ちゃんか。
亨ちゃんの目よう見えとらんのだって?
んだ。
展覧会も悪ぐねえが 俺は 亨に自然を見せてやりてえんだな。
空や 雲や 太陽や
まんどろのお月さんを→
今のうちに よ~ぐ見ておけば
後になって 思い出せるべ。
だがら スケッチに行く時は→
なるべく 亨を連れてそばで遊ばせてるんだ。
ほっか。
桜ちゃんは演奏会 開くんだってな。
大したもんでねえか。
私 音楽家になりたいっちゅう自分の夢は→
一生かなわんだろうなって
いつの頃からか 思っとった。
ほいでも 思い続けてれば
かなう事もあるんだね。
んだ。
これが 最初で最後の→
一生に一度の演奏会でも
私 構わん。
精いっぱい やってみる。
んだな。 やってみれ。
♪♪~(ピアノ)
<練習に いそしむ桜子のもとに思わぬ来客がありました>
亨ちゃん!
亨ちゃん 1人で来たの?(亨)姉ちゃん達と来た。
姉ちゃんは さっちゃんと
味噌蔵で遊んでる。
そう。
ここにいても いい?
いいよ。 おねえちゃんの練習
聴いてく?うん。
ねえ 亨ちゃん。
おねえちゃんね 亨ちゃんのために作った曲があるんだよ。
知っとった?
ううん。
これ。 「亨のテーマ」。
この曲はね「亨ちゃんが大きくて 元気で→
いい子になりますように」って
思って書いたの。 聴いてみる?
うん。
♪♪~(ピアノ)
♪♪「夕焼け小焼けで 日が暮れて」
気を付けてね。 あんまり遠くへ行っちゃ いかんよ。
(2人)は~い!
また来ても いい?いいよ。
1人ででも いつでも おいで。
でも 「危ないから 外 出るな」ってお母さんが。
そっか。
いつか 全部 見えんくなるのかな。
♪♪~
亨ちゃん。
見える? これ。
見えるよ。 キキョウだ。
これを よ~く覚えとくんだよ。
そしたら 取り出したい時に→
いつでも
取り出して見られるでしょう。
一緒に 目ぇつむってみまいか?
ほいで 思い浮かべてごらん。
キキョウが見えるかどうか。
はい。
♪♪~
見える? 亨ちゃん。
見えるよ。
目ぇ開けてごらん。
♪♪~
<そんな事のあった次の日の事です>
今日は お母さん→