2019/06/18(火) 00:20〜01:10 プロフェッショナル 仕事の流儀「疾走、あんこ道〜菓子職人・小幡寿康〜」[解][字][再]

和菓子の世界において幻と言われる職人がいる。
自らの店を持たず ふらりと訪れては
極上のあんこを炊き→
風のように去っていく。
この日もまた 次なる現場へと男は向かっていた。
放浪の菓子職人…
「力を貸してほしい」と頼まれれば全国どこへでも出向き→
和菓子の命と言われる あんこ炊きの技を
惜しみなく伝授する。
自宅のある岐阜から
350キロ離れた和歌山。
依頼主は 全国の菓子店に
あんこを卸す創業130年の…
お邪魔します。
小幡は9年前から この工場のあんこの監修を任され→
数か月に一度
指導にあたってきた。
以来 自分の店を持たず
いわば 流しをしている。
誰もが知る老舗和菓子店をはじめ
これまで…
小幡が
あん炊き場へと向かった。
その最適な炊き方を見極め それを伝える。
小幡が いきなり小豆に煮えたぎった湯を かけだした。
あんこ炊きは
小豆を前日から水につけて柔らかくし→
だが 小幡は水に浸すことなく→
名付けて…
小豆から出る灰汁のもと


シアン化合物を抑える。
沸騰させないよう
強火と弱火を繰り返し→
ある瞬間を待つ。
火を止めに小幡が動いた。
タイミングを読みきり→
この茶色い かたまりこそがへその集合体。
一般的な あんこ炊きでは
へそは 一緒に炊き込まれ→
あんこの中に混ざり込む。
へそを取ると豆の中に熱が通りやすくなり→
ものの数分で。
そりゃそうです 私は あんこよりは…
どんな店に行っても対応できるよう
やり方を変えては炊いてみる。
小豆を炊き上げる 最後の瞬間。
小豆が炊き上がった。
ハハハ。
親子をつなぐ あんパンが人をつないでいく。
(取材者)娘さんにですか?
♪♪~
道中 欠かせない
大切なものがある。
それは ハーモニカ。
♪♪~(ハーモニカ)
なぜ 違う生き方を選んだのか。
理由を教えてくれたのは旅が半ばを過ぎた頃だった。
小幡さんは 昭和23年
菓子屋を営む両親のもとに生まれた。
21歳で


地元 岐阜の老舗菓子店に就職すると→
頭角を現すまで 時間は かからなかった。
器用な手先に加え 研究熱心な性格。
全国に名を知られる職人になっていく。
転機は 44歳の時。
遠く離れた
宮崎県北部の日之影町。
そこに 店の新たな工場を
つくることになった。
町の名産である栗を使い
現地で加工まで行うことで→
質の高い栗あんを作る計画。
小幡さんは 職人頭として後輩たちの指導にあたった。
その中に 一人の若者がいた。
地元出身の…
過疎が進む ふるさとを
なんとかしたいと→
小幡さんにとって 初めての弟子。
親身になって世話をした。
休みの日も岐阜の自宅に泊め
寝食を共にしながら 仕事を教え込んだ。
3年後 佐竹さんは
工場を任されるまでになり→
小幡さんは岐阜の本店へと戻った。
しかし翌年 小幡さんは信じられないことを耳にした。
佐竹さんたちの工場が 採算が合わない
という理由で閉鎖するという。
「まだ始まったばかり」。
小幡さんは 会社に存続を訴えたが方針は覆らなかった。
佐竹さんをはじめ地元の職人たちは

仕事を失った。
3年後の冬 小幡さんのもとに
一本の電話が かかってきた。
それは。
佐竹さんの葬儀を知らせる 電話だった。
「小幡さんですか?」
「はい」って言ったら…
ただそんだけでした。
「佐竹 死にましたわ」って。
佐竹さんは