2020/12/08(火) 22:30〜23:15 プロフェッショナル「限りない探究心が、謎を解く〜文化財復元・馬場良治〜」[解][字]

新しい将来の探査を描けるようなそういう夢のある挑戦を
はやぶさ2でも
思い描ければと思っています。
長い歴史を誇る神社。
国宝の板戸に描かれた400年前の絵が→
長年の風雨で
消えてしまっていた。
だが…。
男は 僅かな痕跡から3年かけて 「線」と「色」を復元。
描かれた当時の美しさをよみがえらせた。
この道 37年文化財復元の第一人者…
(馬場)失礼します。
60件以上の文化財を手がけ 蓄積した…
更に 最先端の科学も貪欲に活用し→
当時の材料や顔料まで 忠実に再現する…
不可能とされてきた
数々の復元を成し遂げ→
いにしえの日本人の心を
鮮やかに よみがえらせてきた。
掛けがえのない伝統文化を
人知れず支える現場に 1年密着。
山の麓に 馬場の
自宅 兼 仕事場がある。
文化財復元のプロは この日→
料理に いそしんでいた。
取材に来た我々に→
地元のものを使った懐石料理を振る舞ってくれるという。
(馬場)1 2 3 4
5 6 7 8 9→
10 11 12 13…


何事も突き詰めないと気が済まない性格。
20代から始めた趣味の料理を→
71歳になった今も 追求しているという。
その姿勢は 仕事でも一貫している。
工房には復元や修理を待つ仏像や絵画などが→
所狭しと並んでいた。
中には どう直すのか見当もつかない重症のものもある。
馬場が行う「復元」とは
さまざまな技術を用い→
作られた当時の状態を
よみがえらせること。
実物は そのまま保存しておき→
一から 忠実に再現したものを作り出す場合が多い。
この分野で馬場は これまでの常識を覆す
驚きの仕事を行ってきた。
例えば…
仏像を取り囲む平安時代に描かれた 天井画。
長年の護摩だきの煙で 絵が黒ずみ
復元するのは不可能と考えられてきた。
だが 馬場は3年かけて→
赤外線カメラなどを用い絵の痕跡を徹底的に調査。
僅かに残った顔料から
背景の色を群青色と特定。
900年前の仏教観を
まざまざと知らしめた。
更に 平等院 鳳凰堂では→
柱や梁の文様の復元に挑戦。
電子顕微鏡なども用い
色や形の分析を続けること 3年。
創建当時の姿を


細部にわたり 明らかにした。
その技術は高く評価され→
建造物彩色の分野で ただ一人→
国の「選定保存技術保持者」に
認定されている。
ここ数年 馬場は
大きな仕事に挑んでいる。
滋賀県 三井寺。
1,300年以上の歴史を持ち→
10件の国宝を所有する名刹だ。
国宝…
ここにある およそ400年前の
ふすま絵の復元を→
馬場は任された。
現在は 保存のため 実物は外されレプリカが置かれている。
絵は傷み 特に左半分は→
ほとんど消えてしまっていた。
この絵は 日本美術の頂点を極めた
狩野派のもので→
安土桃山時代の傑作の一つ。
不可能にも思える復元が 馬場に託された。
一体どんな絵が描かれていたのか。
馬場は ふすま絵の写真に透明なフィルムをのせ→
そこに 消えかけた線を描く作業を始めた。
手がかりは 僅かに残された痕跡。
そして 周囲の絵から得られる情報と
百戦錬磨の馬場の経験だ。
400年の間には
誰かが手を加えている場合もある。
それも慎重に見極めねばならない。

馬場が ある部分を気にしていた。
かすかに残る 黒い痕跡。
ここに描かれていたのは 山ではないか。
作業開始から 2日。
馬場は 消えかけた部分の姿をつかんだ。
だが 翌日のことだった。
いつも饒舌な馬場が黙って絵を見つめていた。
ある違和感を覚えていた。
馬場が昨日描いた山の上には→
木が存在した。