ああ。
だからさ 今のうちに
うまいもん たらふく食っとけよ。
えっ?
今の時代に戻ってきた俺は→
じいちゃんが 病院で
息を引き取ったと知らされた。
見てくれよ じいちゃん。
あんなにうまいもの食ったの初めてだったよ。
じいちゃんの言うとおりだった。
誰もが 腹をすかせてたあの廃虚の東京でさ→
うまいものが どれだけ
みんなの心を元気づけてたのか。
俺 よく分かったんだ。
終戦直後の東京では外食産業が 急激に発達しました。
乏しい食材を 工夫して生まれる食は→
復興へのエネルギーを人々に与えてきました。
寿司も 進化を続けました。
昭和33年には 回転寿司も登場。
寿司は ぐっと身近なものになります。
さすがに これは 外国にはないよね。
築地魂が
どんな寿司にも込められています。
2018年10月6日。
築地市場 最後の日。
市場の関係者が撮影した映像です。
83年にわたって 東京の巨大な胃袋を満たしてきた歴史が終わりました。
移転先は 2.3キロ離れた豊洲。
敷地は 築地の1.7倍に広がりました。
建物の閉鎖性を高め
食材の衛生管理を徹底。
更に 大量輸送を重視して
駐車場 積み込みのスペースを確保。
流通の効率化を図ろうとしています。
実は 魚の卸売市場の取扱量は激減しています。
市場が扱う量は
ピークだった1987年の半分以下。
食品流通は 既に 産直など
大手スーパーを中心とする→
市場を通さない取り引きが
主流となりつつあります。
中間業者である仲卸は
廃業を余儀なくされ→
30年前の半分以下にまで減っています。
しかし 嘆いてばかりもいられません。
田中さんの店では 新しい認証を取得し
危機を乗り越えようとしています。
この日 店舗が
食品安全の規格にかなっているのか→
コンサルタントを招いていました。
世界的な食品安全規格FSSCの取得を目指しているのです。
築地の伝統も
国際基準の前では通用しません。
一つの標語を掲げました。
築地魚河岸の誇りを引き継ぎ→
世界一を目指して挑戦する。
築地魂を新しい時代に受け継いでいく決意です。
12月 革新的な寿司を目指す
杉田孝明さんは→
豊洲市場に
朝の買い出しに向かっていました。
杉田さんは 間もなく
大事なお客さんを迎えます。
あっ そうなんすか。
その客が最も楽しみにしているのがコハダです。
仕込みの技術が問われる
江戸前寿司の代表格。
特有の生臭さがあり→
煮ても焼いてもおいしくない魚ですが→
絶妙な加減で締めた時にだけ
極上の味になる→
難しいネタです。
選ぶポイントは においです。
においが臭みにならない 一歩手前の一線。
しかし 難しいのは 魚を選ぶ時点ではにおいが分からないことです。
仲卸の田中さんは
指先の感覚を研ぎ澄ませ→
杉田さんの求めるコハダを探り当てます。
コハダは 包丁を入れ 締めることで初めて においが分かります。
仲卸の目利きに 狂いはありませんでした。
今回 杉田さんは このコハダの仕込みで新たな挑戦をするつもりです。
王道の塩ではなく 砂糖締め。
柔らかな うまみを引き出そうという試みです。
日本料理の技法ですが コハダに用いると
風味を台なしにするリスクがあり→
挑戦する料理人は まず いません。
よろしくお願いします。
毎年 年末の この時期やって来る
団体のお客さんです。
会社も仕事も さまざま。
杉田さんの寿司に出会い とりこになった人たちが集まり→
一年の大切な区切りをつけるのです。
新しい手法でこしらえたコハダです。
皆 言葉少なに
ひたすら 寿司を味わいます。
海から市場 そして料理人への
おいしさのリレーは→
ここが終着点です。
♪♪~
お客さんが満足したかどうか→