日本が世界に誇る、和牛。
鮮やかなサシの入った肉は、
一口食べれば口の中でとろける、絶品です。
今、その和牛をめぐって、異変が
起きています。
海外の市場に出回る、外国産の「
WAGYU」。
日本の和牛に、今、何が、起きて
いるのでしょうか。
兵庫県養父市。
この牧場では、およそ1700頭の但馬牛が
1頭1頭、丁寧に育てられていま
す。
和牛は、古くから日本で改良され
てきた4つの品種と、
それを掛け合わせて生まれた牛の
ことです。
その中でも、但馬牛は、
兵庫県内でしか育てることができません。
種牛だけでなく、受精卵まで、す
べて、
兵庫県が管理しています。
すべての和牛の遺伝子について、
国外への持ち出しは、原則、認め
られていません。
厳しく管理していたはず、でした
が。
「去年7月、大阪府の男性が、フ
ェリーに和牛の受精卵を持ち込み、
中国に、持ち出そうとしました」
男性が持ち出そうとした受精卵は、ストロー状の容器数百本分。
結局、中国当局に指摘され、
男性は、受精卵を、日本に持ち帰ります。
和牛の遺伝子が、海外に流出する
まで、あとわずかでした。
農林水産省は、和牛の受精卵の国
外持ち出しをめぐっては
初めて、男性を刑事告発します。
無断で、和牛の受精卵などを持ち出すと
3年以下の懲役、または、
100万円以下の罰金が科される可能性があります。
和牛の遺伝子が海外に流出すれば、
日本の畜産業が、大きなダメージを受けるとして
農水省も調査に乗り出しました。
一方で、海外では、すでに、和牛をめぐって、
驚くべきことが起きていました。
実は、これまでに、和牛の遺伝子情報を
持ち出すことが可能だった時代が
ありました。
和牛が初めて海外に輸出されたの
は1970年代。
研究用として、アメリカに2頭が
輸出されたのです。
その後、およそ20年間で、合わ
せて247頭が、海を渡りました。
その時、和牛を海外に輸出してい
た男性は、
当時のことを、こう話しています。
「私は、味のいい和牛を、世界に広めたかった。
しかし、それによって、全国から
激しい批判を
受けることになった」
海外に出て行った和牛は、現地の牛と交配され、
瞬く間に、広まりました。
日本固有の和牛が、外国産の「WAGYU」へと、
変わっていったのです。
日本の和牛と、外国産の「WAGYU」。
2つの間には、大きな違いがあり
ます。
日本では、和牛同士を掛け合わせ、
100%の遺伝子を受け継いでなければ
和牛を名乗ることは、許されませ
ん。
ところが、海外では、別の種類と
掛け合わせていても、
「WAGYU」と呼んでいるので
す。
外国産の「WAGYU」は、すで
に海外で、
広く流通しています。
「こちらのお店では、日本産ではない『WAGYU』が、
販売されているということです。
あ、ありましたね。こちら、オーストラリア産と、
書かれています」
オーストラリアでは、25万頭もの「WAGYU」が飼育されてい
ます。
日本のものより安い「WAGYU」を
フランスなどに輸出しているので
す。
和牛以外にも、遺伝子情報が
海外に流出したものがあります。
「そだねー、うん」
去年、平昌オリンピックで、注目を集めた
カーリング女子、日本代表。
選手が食べていた、韓国産のイチゴは
日本の品種を元に作られたもので
した。
イチゴの品種が流出したことによ
る日本の農家の損失は
5年で220億円に上るともいわ