♪♪~
この3か月後
君子さんに がんが見つかりました。
最期は 病院で亡くなりました。
自宅で最期を迎えるという願いはかないませんでしたが→
家族に見守られながらの大往生でした。
小堀医師が千加三さんの診察に通い始めて5か月。
どれですか?
この…。あ~。
ちょっとね 登らないと無理…。
おはよう。
千加三さんの体は衰弱が進んでいました。
先生来ましたよ。 目 開く?
柿がね 柿が色づいてきましたね。
柿の色がよくなってきた。
ああ じゃあ もう食べ頃ですね。
食べ頃だと思うんだけどね。
「よっしゃ~」。 フフフ。
あなたが採ってくれないと…。
何の芽が出てくる? 柿?
ああ 匂い?
あ~ そう。
なるほどね。
ありがとうございます。
じゃあ またね。
柿が色づいた頃にね。 じゃあ またね。
どうも ありがとうございました。
2週間後
広美さんから緊急の連絡が入りました。
どんな… どんな様子が…?
はい。あ~ どうも どうも。あっ 先生。あなたが気が付いたの?
申し訳ございません。
いえいえ。
はい。
あ~ そうか そうか。
分かる? 分かる?
う~ん…。 本当に 最期…。
あれ? 娘さん… 広美さん。
はい。
あのね やっぱり…。
こっち来られる?はい。
あっ 前 ごめんなさい。
ここ座って。はい。
お父さ~ん。
お父さん? お父さん?
あっ でも お手てが冷たい。
お父さん?
私も いけなかったんですけど…→
「足が重たい」とか「そこの毛布ちょっと どかしてくれる?」とか→
いろいろ… 頼まれて→
「敷きパッドの間に挟まってる その毛布ちょっと取ってくれる?」って→
お父さん 寒かったんだから
言ったんですよね。
それで 私も ベッド
どかさなきゃいけないから→
「お父さん そんな無理なこと言わないで
意地悪してこないで」って→
泣いちゃったんです。 泣かなきゃ
よかったなって 今 思ってるんだけど…。
それは いいと思うよ。
だって そんなきれい事じゃないからね。
一生のつきあいっていうのは
ケンカもすりゃあさ→
どなり合いもするわけだから→
一番自然な形で最後…。本当 今までケンカってしたことなかったんだけど。
泣いたり笑ったり もう普通の→
いつもどおりの終わり方をしたっていうことだから それは いいですよ。
そこを改まって 「お父さん
お世話になりました」なんて言う方が→
よっぽどおかしいよ
…と思いますけどね。そうですか。
今 心臓 ほとんど止まりかけてるね。
そうですか。
軽く呼吸だけ ちょっと こう…
あなたは分からないけど。
かすかに呼吸してんだ。
あっ。お世話になってます。本当に もう 何て言うか…。
微弱?
心臓 ほとんどね 止まってるんだけど→
かすかに…。
近くに住む親戚たちが集まってきました。
片山だよ。 分かる? 分かる?
しっかりしなきゃ駄目だよ。
なっ? 分かる? 口は
何か パクパクやってんだけどね。
お父さん… お父さ~ん。
片山だよ~。
おじさ~ん
おじさん。
よく頑張ったね。 よく頑張ったよ。
もう頑張れ 頑張れって言えないけどさ…。
おじさん。 もう一回 話 したいね。
頑張って!
つぐさんちの和代ねえさんだよ。
口 パクパクやるんだけどね 声が…。
おじさ~ん。
あっ ごめんなさい。 どうぞ。
おじさん おじさん。
私 来たよ。加代子おねえさんだよ。
加代子が来たよ おじさん。