じゃ 俺が もう一回言ってやっから→
口移しでもって教えてやろう」。
「へい。→
頭…」。
「バカ！」。「いてえ～。 だって 今 頭 口移し…」。
「そうじゃねえやな。
俺が言うから あとからついてこい」。
「だったら そう言って下さい。
あっしだって…」。 「バカだよ お前は！→
『お～い 旅人』」。 「え？」。
「いや 『お～い 旅人』」。
「いや 私 旅人じゃない」。
「お前に言ってんじゃねえんだよ→
ほんとに。
『お～い 旅人』 あとからついてこい」。
「お～い 旅人」。
「そうでい。→
『ここを知って通ったか
知らずに通ったか』」。
「ここを知って通ったか
シラミが通ったか」。
「シラミが通るけえ 『知らずに通ったか』」。
「知らずに通ったか」。
「『明けの元朝から 暮れの晦日まで』」。
「明けの元元元元元朝から暮れの晦日まで？」。
「どうも調子がおかしいね お前は。
『明けの元朝から 暮れの晦日まで→
ここは 俺の頭の縄張りよ』」。
「俺の頭は欲張りよ」。「大きなお世話だ この野郎。→
『俺の頭の縄張りよ。
知って通ったというのなら 命はねえ』」。
「知って通ったというのなら 命はねえ」。
「『知らずに通ったというのなら命は助けてやる。 そのかわり』」。
「そのかわり！」。
「略すねえ この野郎。→
『知らずに通ったというのなら
命は助けてやる。 そのかわり』」。
「知らずに通ったというのなら
命は助けてやる。 そのかわり」。
「『身ぐるみ脱いで置いていけ』」。
「身ぐちゅびちゅびちゅば～。→
ばあ～。 言えた」。
「言えてねえよ この野郎。『身ぐるみ脱いで置いていけ』」。
「身ぐちゅびちゅびちゅば～」。
「身ぐるみ！」。 「身ぐちゅび！→
身ぐちゅび！」。
「身ぐるみ！」。「身ぐちゅび！ 身ぐちゅびです！→
身ぐちゅびにして下さい！」。
「み」。
「み」。
「ぐ」。「ぐ」。
「る」。
「ちゅ」。「そこだよ。→
『身ぐるみ脱いで置いていけ』」。
「身ぐちゅびちゅびちゅば」。「『身ぐるみ』 『身ぐるみ』」。
「みみみ 身ぐるみ脱いで 置いていけ」。
「そうだよ。→
『嫌とぬかしたのなら 最後の助』」。
「嫌とぬかしたのなら 最後っぺ」。「最後っぺじゃねえやな。 『最後の助。→
だてには差さねえ ２尺８寸段平物』」。
「だだ… だてには差さねえ２尺８寸段平物」。
「『うぬの腹へ お見舞え申すぞ』」。
「うぬの腹へ お見舞え申すぞ」。
「そうだよ」。
「そうだよ」。
「お前に言ってんだ バカ野郎。
しょうがねえ野郎だ。→
おうおう この辺りが鈴ヶ森よ」。
「あら～ 大層寂しいところですね。あの 頭 寂しくてしょうがないですから→
手ぇつなぎましょ。 指を絡めて…」。
「うるせえな この野郎。この藪ん中へ入る」。
「え？ あら ちょっと
頭 頭。→
頭 そうやって入り慣れてっからいいけど
私 そういうわけにいかない…。→
分かりました 入りますよ もう。→
このね 木の小枝が すご…おっと は… 鼻に小枝が…→
ヘ～クション！ ヘ～クション！
こ… ヘ～クション！」。
「うるせえ野郎だ てめえは。 いいから早く
こっちへ入ってこいっての」。
「分かってますよ もう。
ヘ… ヘ～クションと。→
ああ あ～あ 入りやした」。
「入りやしたって そんなところで立ちはだかっててどうすんだい。→
人が来たら目立つだろうがよ。 いいから
尻っぱしょりして パッとしゃがめ」。
「ダメですよ 尻っぱしょり。 私 今日はね
ふんどし締めてきてねえんですから」。
「だらしのねえ野郎だな てめえは。
何でもいいから しゃがめ。→
ほらほら 人が来たから。 早く…」。
「分かりましたよ。→
じゃ 尻っぱしょりして… よっと
しゃがみますよ。→
ああ～！」。
「何でい 今度は」。「ああ… ああ。→
今 ちょうどいいところに
タケノコが生えてて→
私のお尻 下からつついて… ああ～！」。