3か月前に死んだ先輩やがな。→
ほな わい 死んだんか?
先輩に話聞こう。→
あの~ 先輩 先輩!」。
「おっ 田中やないか! 久しぶりやな!元気か?」。
「いや ちょっと待って下さい。
もう死んでまんねやろ これ」。
「うん そや。 ここ 冥土や」。
「ほな あの世ですか?」。「何を言うてんねん。→
生きてる方が あの世になって
こっちが この世になんねんな」。
「あ~ なるほど。
入れ代わりまんねんな。→
ほな ここにいてる人ら
皆 死んではりまんのん?」。
「そうやがな」。
「へえ~。 あっ あそこにいてんのん→
志村けんさんと違いますか?」。
「そうやがな。ほれ いっぱいしゃべってはるやろ?→
やっぱり 芸能人は芸能人同士の方が
話が合うてなもんでな→
あそこで
輪になって話してはるやないかいな。→
志村けんさんの隣が
渡 哲也さんやな。→
C.W.ニコル 竹内結子 岸部四郎か。
ほう~。→
ほんで今 坂田藤十郎さんと内海桂子に
話しかけてんのが マラドーナや」。
「ちょっと待って下さい。
話 合いまんのか それ」。
「知らんがな。 こっちやったら
割と話 通じるさかいにな」。
「あっ! あっ あそこ! 主婦の女優さん。
あの人 私 好きでしてん」。
「あ~あ~ あれな キリンの嫁はんな」。
「何です?」。
「いや あの キリンの… あっ 違うわ。
キリンやなしにライオン。→
いや ライオン違うわ。
え~ シマウマ。 え~ カバ。 ゾウ。→
え~ ブタ! え~ あっ バク!→
岡江久美子さんやな」。
「あれ 岡江久美子さんですか。
あ~ そういう名前でしたなあ。→
へえ~ こっちは
有名人いっぱいいてまんねんな」。
「そら いっぱいいてるがな。
こっちはな 有名人だらけやで。→
そうそう さっき
落語会のチラシもろてん」。
「えっ? 落語会のチラシ?」。
「そうやがな。 東西名人会。 なっ?→
やっぱりな
もう 娑婆の落語なんか聴かへんで。→
こっち 名人ばっかり
いてんねんさかいにな。→
え~ 上方はな 松鶴 米朝
五代目 文枝 三代目 春団治。→
四天王がそろてるなあ。
で 東京方も豪華やなあ。→
古今亭志ん朝 立川談志 桂 歌丸
ほいで 柳家小三治」。
「いや すんまへん。
それ まだ生きてまっせ。→
死んでへんのと違いまっか?」。
「ここに ちゃんと書いてあるやろ? 注で。『近日来演』」。
「怒られまっせ。 大丈夫でっか?→
このあと これ 皆 どこ行きまんねん?」。
「さあさあ
この行列に付き添っていったらな→
パスポート… 入館許可証みたいなもん
くれはんのやな。→
冥土のパスポートみたいなもんや。
とりあえず ついていこう ついていこう」。
行列に ぞろぞろ ぞろぞろ連なって
ついていきますと→
大きな鉄の扉がございまして
横手には「受付」と書かれておりまして→
「マイナンバー発行所」と
書いてありますね。
パソコンが1台 置いてありまして→
紫色の鬼 緑の鬼 ピンクの鬼なんかが受付をしております。
「あれ? 先輩 何や 何や 紫とかね
緑とか ピンクて珍しいでんな。→
普通 赤鬼とか青鬼とか違いまんのん?」。
「さあさあ 何や聞いたらな→
1本角の青鬼とな 2本角の青鬼
で 1本角の赤鬼 2本角の赤鬼→
1本角の黄色 2本角の黄色
この6体の鬼はな→
この事務方から もう6体の鬼は
こいつらあかんいうて外されてん。→
閻魔大王に言われて
もう外されてん」。
「えっ? どういう理由で?」。
「総合的 俯瞰的な理由らしいわ」。
「もう意味が分かりまへんなあ」。
「意味が分からんけどとりあえず外されたんやなあ。→
せやさかい あそこでな