一息に 朝倉 浅井を潰せるのだが…。
まだ 確かなことは分かりませぬが…→
武田信玄が…。
死んだという噂がございます。
何?
元号が改まった 天正元年8月。
浅井家の重臣が寝返ったという大きな知らせが入った。
信長は すぐさま近江へ出陣した。
(朝倉義景)かかれ!
同じころ 朝倉義景も越前から出陣。
信長は 再び 朝倉 浅井軍と相対した。
(喚声)
織田軍の奇襲により朝倉家家老 山崎吉家は討ち死に。
追え! たたき潰せ!
勢いを増す織田軍は 義景の本拠一乗谷へも突き進み 火をかけた。
♪♪~
何のまねじゃ?
(朝倉景鏡)もはやこれまで。→
義景殿 ここは潔くお腹を召されませ。
ばかな。 ここで わしが腹を切れば
朝倉家はどうなる?
100年続いた朝倉の名が絶え果てるぞ。
朝倉の名… この期に及んで…。
景鏡… お前 寝返ったな!
つろうございますが これも戦の世。
(義景)許さぬ 景鏡!
(景鏡)お覚悟を。
(義景)お主ら 誰に筒先を向けておる?→
足利尊氏公から越前をあてがわれて以来 11代→
一乗谷に本拠を構えて 5代。
わしは朝倉宗家…。
朝倉義景じゃ!
越前の朝倉義景は散った。
信長は小谷城を攻め落とし
近江 浅井家も滅ぼした。
240年続いた室町幕府は ついに倒れた。
群雄が割拠した乱世は 信長による新しき時代を迎えようとしていた。
(今井宗久)80貫。
これは 50貫。
十兵衛 これへ。
はっ。
松永久秀が 許しを乞うてきた。
松永殿が?
朝倉 浅井 今はなく 将軍も去った。
悟ったのであろう 孤立無援じゃと。
どう思う?
松永殿は 味方にすれば心強い。欲しいお方です。
ならば許すか。 土産は 城じゃ。
城?多聞山城を明け渡す と。
(宗久)さすが越前で5代続いた大大名
名品ぞろいでございました。→
しかし 織田様 これだけのものを
一手に収められた方は→
ほかにはございますまい。
もはや天下を取ったも同然。
蘭奢待… 存じておるか?
あの「古めきしずか」と呼ばれえも言われぬ香りの?
天下一の名香と名高き
確か 伽羅の香木とか…。
(宗久)代々続く世の中で 大きなことを
成し遂げた者しか 見ることかないませぬ。
そのようじゃな。
(宗久)その蘭奢待が何か…?
わしはどうかな?
今のわしは蘭奢待を拝見できると思うか?
どうじゃ?
ハッハッハッハッハ…!
それは もう! 今や この国のお武家衆で
織田様の右に出る者はおりませぬ。→
拝見には何の障りもございますまい。
そう思うか?(宗久)はい。
ならば… 一度 見てみるか。
どうだ 十兵衛?
もし拝見となれば 東大寺はもとより
帝のお許しを得ませぬと…。
帝… 帝は お許しになるであろう。
♪♪~
宗久殿は どう思われますか?
蘭奢待拝見について。
殿は一体 何をお考えなのか?
公方様を京から追われ朝倉 浅井を討ち果たした。
今や 京の周りに敵なし。
いわば 一つの山の頂に立たれた。
そういうお方なればこそ 見たい景色が
あるということでございましょう。
そうであろうか。
まことに そうであろうか?
私に言わせれば 頂はまだこれから。
公方様を退け さて これからどのような世をお作りになるのか。
今は それを熟慮すべき大事の時。
まだ山の中腹なのです。 頂は遠い。
なるほど。
しかし あのお方は 今 ここでご自分の値打ちを知りたがっておられる。
人の値打ちは目には見えませぬ。
しかし何か見える形で お知りになりたい…→
違いますかな?
見る景色が変われば人もまた変わるとか…。
ごめんくださいまし。
♪♪~
(三条西実澄)申し上げます。