明智様の足元にも まだ及びませぬ。
私の足元に及ばぬどころか
見事に私の足をすくった。
は? 私が明智様の足を?
見事にすくった。
それはまた 奇妙な申されようじゃ。
すくわれた方は 奇妙を通り越しあきれ果てるばかりじゃ。
平蜘蛛の釜の一件 覚えがござろう。
平蜘蛛?
羽柴殿も殿に学んで
近頃 茶の道に詳しいと聞く。
この釜 存じておられよう。
羽柴殿は 松永殿が 生前私に この釜を譲ったと知り→
信長様にご注進して
信長様が不快に思われるよう仕組んだ。
誰がさようなことを申しましたか!?
羽柴殿には多くの弟がおるそうだな。
忍びもどきに あちこちに忍び入り→
見知ったこと 聞いたことを兄上に報じて→
食いぶちを稼いでおるそうな。
わしの弟が?
気を付けなされ。 その弟は口が軽い。
松永殿と私が話し合うているのを家に忍び入って聞いたと→
あちこちに自慢して歩いておるそうな。
根も葉もない ざれ言じゃ!その弟の名をお教えいたそうか。
辰吾郎。
それを突き止めた家臣に命じ 辰吾郎をここに引っ立ててこさせてもよいのだが。
(秀吉)信長様より 松永の動きを追えと
命じられたのは間違いございませぬ。→
まさか明智様がお会いになるとは
思いも寄らず→
信長様に申し上げるべきかどうか
迷いに迷い…!
迷うたが 出世の道を選んだ。
申し上げれば不義理申し上げねば不忠の極み→
同じことなら総大将になり
敵を全て討ち果たして→
この乱世を平らかにし
その後 おわびをすれば→
きっと明智様はお許しになると思い…。
貴殿にとって平らかな世とは どういう世じゃ?
昔の わしのような貧乏人がおらぬ
世ですかな…。
♪♪~
こたびは 貸しにしておく。
口の軽い弟は よく叱っておくべきだな。
辰吾郎は 昔 おっ母が→
どこぞの男との間に
もうけた子でござってな。
しつけも何もあったものではない。
わしに金をせびるため→
いろいろやってみせるゆえ
使うてやったまでのこと。
叱っておきまする。
播磨で存分に手柄をお立てになればよい。
お行きなされ。
明智様に 一つお尋ねしようと思うていたのじゃが…→
先ほど 庭で東庵殿の所に出入りする
あの菊丸を見かけました。
あの男 近頃 おっ母のもとに上がり込んで
薬を煎じて のませたり→
あれこれ話していくという。
明智様は 何者かご承知の上で近づけておられますのか?
ただの薬売りと承知しておる。
ほう…。 わしには そうは見えませぬが。
♪♪~
おらっ!うお~!いけるぞ いけるぞ!
うりゃ~!
(辰吾郎)くそ~っ!
おお 何じゃ。
もう行くのか。
(辰吾郎)あ?→
何だ お主らか。
(秀吉の家臣)辰吾郎様 あちらのお堂にて
殿がお待ちでござります。→
ご同道下さりませ。
さあ。
何じゃ 何じゃ。
帰れ! 帰れ!腹減った!(秀吉)ああ よいよい。
(子どもたち)お金! お金!
くれ! くれ!
(秀吉)ご苦労。
はっ!
見よ。 昔のわしじゃ。
皆 昔のわしじゃ。
♪♪~
(菊丸)あ… 十兵衛様…!
入ってよいか。
こんな所でございますが。
構わぬ。 ああ 続けてくれ。
先ほど たま様がお見えになり駒さんと市へお行きになりました。
ほう。 そうか。
今日は 何用で?ああ。
丹波の戦以来 肩がひどく凝ってな。
東庵殿に鍼をうって頂こうかと思うて来たのだ。
おお それはよろしうございます。
丹波も本願寺も→
重荷でございますから
肩も凝りますでしょう。
うむ 戦だけではない。