行ったかもしれないと
私は思っている。
木寺≫役者どころではなかった可能性も…?
樹木≫もちろん、そうですよね。
あるな…。今トンネルだけど。
そして、私の家庭の話に…。
樹木≫でも、それを安定さすのはやっぱり男の仕事ですよ。
樹木≫ああ、本当にね
同じレベルになっちゃうのね。
樹木≫ああ…だとしたらね
深い縁なんだから、ね。
きっと感謝するときがきますよ
両方で。
そのほうが、おもしろいでしょう。
そういうふうに思ったほうが。
そうやって生活したほうが。
これで、もう嫌だなと思いながらいつ別れてもいいんだ
みたいにして
ずーっと生活してるよりは
ずっと、そのほうが
いいような気がするけどな。
連日30度を超える暑さの中で
撮影は続きました。
≫本番!よーい、はい!
樹木≫お待たせして、すいません。
希林さんが
全身がんであることを
公表したのは5年前のことです。
その後、放射線治療が効果を挙げ仕事を続けてきました。
1年前には
治療に一区切りをつけたと宣言もしていました。
樹木≫終わったですか?
この日、希林さんは
控え室のベッドで
横になっていました。
樹木≫誰も言いに来ないから
どうしたかと思った。
≫ちょっと状況の
ご報告にあがりました。
樹木≫あしたになったの?
≫あしたにならないです。
あしたには、なれないんです。
あの、今ちょっと
山崎さんの残ったカットを
これからやりまして
そのあと、秀子さんなので
また、もう少々…。
あと、どれぐらいですかね
2カットぐらいはやるんで。
撮影が5時間も遅れ
希林さんの出番は深夜にずれ込んでいました。
≫すみません
お待たせいたしました。
樹木≫ごめんね、ちょっと…。
固まっちゃってね、動かないのよ。
≫大丈夫です、ゆっくりで。
いいの、いいの。
誰かがいても同じなの。
≫そういうもんなんですね。
樹木≫よいしょ。うわー…。
ふふっ、行こう。
≫いや、あの本当に
ゆっくりで大丈夫です。
樹木≫ゆっくりでも行かないと。
それは、初めて見る希林さんの姿でした。
≫こちら動線
ちょっと空けてください。
樹木≫ありがとうございました。
現場での希林さんは
何事もなかったかのように
撮影に臨んでいました。
≫じゃあテストいきます。
≫先生!山崎≫おー!
樹木≫あら、やだ…。
≫はい、カットです。
希林さんは、ひとつきに及ぶ
撮影を乗り切りました。
その翌日
希林さんは息つく暇もなく
次の映画に取りかかりました。
希林さんは、どうやって気持ちを切り替えるのか
素朴な疑問が湧きました。
次の作品はカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した
「万引き家族」です。
松岡≫ねえ、誘拐だよ、あれどう見ても。
安藤≫違うよー。
監禁も身代金要求もしてないし。
松岡≫そういう問題?
樹木≫出してないのかね…
捜索願い。
犯罪でつながった疑似家族の絆を描いた作品です。
城≫白菜ばっかり。
安藤≫白菜、体にいいんだよー。
肉の味、しみてるし。
おふも、もうできてるよ。
希林さんが
是枝監督の作品に出演するのは
これで6本目です。
打ち合わせのとき、希林さんが脚本への疑問を投げかけました。
ゆりが映ってる!