10年前 ベイリーはアメリカで→
医療犬として
特別な訓練を受けました。
訓練は 実に1年に及びました。
看護師の森田さんも一緒にトレーニングを受けました。
セラピー犬の役割は つかず離れず
患者に寄り添うこと。
ほえたり かんだりしないことは
もちろん→
人に甘えて なめたりするのも厳禁です。
どんな状況でも 興奮せず森田さんの指示に従って行動できるよう→
徹底して教育されたのです。
初めは 受け入れる側の病院は慎重でした。
安全面や衛生面を心配する声も多く→
その効果に疑問の声も上がりました。
しかし ベイリーは
想像を超える力を発揮し始めます。
脳腫瘍で 何度も手術を繰り返す男の子。
べイリーと会って 笑顔を取り戻しました。
意識障害で しゃべったり
体を動かしたりが できない男の子。
ベイリーが寄り添うと
うっすらと目を開け 反応を示しました。
次第に 医師や看護師の信頼が
深まっていきました。
終わりのない 治療や手術。
命を落とす子どももいます。
べイリーは 9年間
子どもたちの不安や苦しみを→
まるで分かっているかのように
寄り添い続けてきたのです。
なぜ べイリーは 子どもたちを
癒やすことができるのか?
犬が持つ不思議な力に
最新の科学が迫り始めています。
これは さまざまな人間の声を聴かせ
犬の脳の活動を調べる実験です。
その結果 犬の聴覚野には→
人間の声色から感情を読み取る場所が→
確かに
あることが分かってきました。
まずは 人の笑い声やうれしい声を
聞かせます。
(笑い声)
すると 活動は活発になります。
次に 不機嫌な声を聞かせると…。
(不機嫌な声)
活動は低下します。
そっくりな仕組みが人の脳にも備わっています。
つまり 犬には 人間と同じように→
人の喜怒哀楽を読み取る能力があると考えられるのです。
ほかの動物にはない 犬だけが持つ→
人との特別な関係も明らかになっています。
犬の研究の世界的権威
麻布大学 菊水健史さんです。
4年前 アメリカの科学雑誌
「サイエンス」に掲載された→
菊水さんの研究が
世界の研究者を驚かせました。
実験に参加したのは 犬と その飼い主。
互いに見つめ合った時→
人の体内で あるホルモンが
分泌されることが分かりました。
それは 脳の下垂体から分泌される
オキシトシンというホルモン。
オキシトシンは 相手への愛情を深め
絆を強めるホルモンです。
更に 心を癒やしたり
体の痛みを和らげる→
働きもあります。
犬と見つめ合った時人間の体内のオキシトシンは→
3倍以上に増加。
これが 犬のセラピー効果の大きな理由だと考えられるのです。
この実験 本当の驚きは ここからです。
実は 見つめ合うことで→
犬の側にも オキシトシンが
分泌されることが分かりました。
これまで オキシトシンは
同じ種の動物同士が見つめ合ったり→
触れ合ったりした時だけ分泌されると
考えられてきました。
しかし 今回 人と犬という
全く違う生き物の間に→
オキシトシンを分泌し合い
絆を深める仕組みがあることが→
初めて確認されました。
人と犬の体の中にある絆をつくる特別な仕組み。
それこそが 犬が 私たちに寄り添い
心を癒やしてくれる理由だったのです。
ベイリーに支えられて闘病を続けてきた
ゆいちゃん。
いよいよ手術を受ける日です。
ゆいちゃん 不安だよね。
薬のんだの?
うん。
早朝出勤で ベイリーが駆けつけました。
パパさんお久しぶりです。お久しぶり。
こういう時しか会えないから。
病室の空気が一気に和みます。
(森田)よかったね。