夫婦でした。
現在のお店です。
息子の伸さんが跡を継いでいます。
この店のおでんの味は
あの名優をとりこにしました。
昭和27年ごろに
俳優の森繁久彌さんが来はって→
うちのおやじを捕まえて→
「これは関東煮ちゃう」いうて言わはったんが始まりで→
おやじが 「ほなら→
どう言いまんねん」いうて聞いたら→
「独特関西煮やって
名乗ったらええ」ちゅうて。
「しかし
独特は ちょっと重たいから→
軽く 関西煮でやったらええわ」。
その時 本人が書いた書が残っています。
そのおでんは独創的。
鍋の底に潜ませるのはなんと 鯛の頭。
それも 天然ものに限られます。
昆布も たっぷり載せていきます。
母親から受け継いだ
濃厚なつゆを入れます。
ここに加えるのが 鶏のスープ。
極め付きは白みそを加える これが みそ。
芳醇な だしに
白みそのコクが加わります。
厨房では この店自慢のおでん種
特製かまぼこが作られています。
高級魚の鱧が使われます。
庶民的な おでんに鱧を入れるという英断。
たねは いろいろ考えて…
おでんの中にロールキャベツ入れたんは→
うちのおふくろが
多分 初めてや思います。
和のおでんに
洋風のたねを入れるという発想。
昭和25年から始まったそうです。
森繁久彌が愛した一皿。
好みのたねは 誰にも譲れません。
はいいよいよ出来上がりですよ。
こうして ちょうちんをね→
こうやって つるしてっと。ハハハハ。
本格的になりましたね。
ねえ。 赤い ちょうちんはおでん屋さんのシンボルです。
何だか
温かい気持ちになりますよね。
うん。 フフッ。
ビルの奥に隠れがのような お店があります。
南アフリカのアサメラという木で作った
カウンター。
中央で どんと構えているのが
レンガ作りのモダンなかまど。
京都でいう…
店のシンボルにしました。
おでん鍋は
程よい温かさを保つために→
湯煎になっています。
四隅では お燗もつけられます。
京都の伝統に モダンさを加えた→
新感覚の店にしようと考えました。
出す直前に 別に用意した
仕上げ用のつゆをかけます。
盛り付けにも こだわりが。
器は若手の陶芸家に注文しました。
白と茶の器には→
真ん中に あめ色の大根を1つ。
タコと卵は 白磁の皿で。
おでんを いかに引き立たせるか。
器選びにも心を配ります。
お客様に やっぱ…
「おでん」 最後の壺は→
「目でも味わう至福のひととき」。
細い坂道を下った所。
ちょうちんがなければ見過ごしてしまいそうな一軒家。
のれんをくぐると
こよいの舞台が見えてきます。
古民家風のたたずまい。
カウンターのどこからでも見えるのが→
店の顔
あかがね色に輝く おでん鍋です。
瓢箪型の大鍋。
銅の打ち出しで作った特注品。
店を始めて28年。
これは2代目だそうです。
瓢箪の鍋に
特製のつゆが注がれていきます。
昆布に さば節 かつお節→
そして 干ししいたけの茎を使っています。
この店のあるじ 中田利雄さん。
16歳から修業を始め和食の道を究めてきました。
瓢箪型のおでん鍋。
実はこの形ならではの利点があります。
大きい方では→
たねが 気持ちよさそうに煮えていきます。
小さい方では
余熱で程よく温めて。
瓢箪型のお鍋には
優しい心配りがありました。
食べ頃になりました。