甘うなんか見てしまへん!
どないしても この芝居やりたいんだす!
みんなに見てもらいたいんだす!
勝手にしたら。
稽古しよ!
(一同)はい!
はい!
リス君 お姫様を助けに行こう。
(美鈴)相手は恐ろしい山賊だよ。
大丈夫。 力を合わせれば
何だってできるさ!
聞こえへん。
芝居小屋では 思てるよりも声が吸われて消えてしまう。
おなかから息吐きながら
体に響かせるような声 出さな。
ネズミさ~ん! どうか僕たちに…。
叫んでるだけや。
ネズミさ~ん!
夜遅うまで稽古は続いたものの→
千代ちゃんは
なかなか うまいことできず。
みんなが帰ったあと
一人残って稽古を続けていると…。
助けに参りました。
千鳥さん…。
これを振りなさい。
えっ…。
これを振って声を出せば
自然と腹式になる。
あ! え!
この感覚を 体に覚え込ます!はい。
あ! え!
叫ぶんじゃない!
普通に話す声で聞こえるように
響かせるの もう一度。
あ え…。
違う!
こうして 千鳥さんの猛特訓が続き…。
違う!
(鶏の鳴き声)
あっ…。
(笑い声)
おおきに おおきに。おおきに おおきに。
だんない。 千代やったら できる。
ありがとございます。
あれ? 何か忘れてる。
大事な小道具ちゃうの?
…って そのまま本番始まってしもたがな。
こら まずいで~。
力を合わせれば
何だってできるさ!
(京子)千代 主役ちゃうんけ。
あっちゃ… いくそったね。
姫は俺様のものだ!
そうはさせないぞ。
山の神様がくれた この聖なる短剣…。
<短剣があれへん>
あちゃ~。
<何か言わな…>
リ… リス様が相手だ!
<そや…>
山賊さん 僕と友達になろ。
えっ?へっ?ほんまは さみしかったんやろ。
せやさかい
お姫さん さろたりしたんやんな。
(美鈴)<勝手に筋変えて どないすんの>
今まで つらいことばっかりやったかも分かれへんけど→
だんない。
これからは ええことも ぎょうさんある。
せやさかい…→
みんな一緒に楽しい冒険つづけよう!
(拍手)
こうして 千代ちゃんの初舞台は どうにか無事に幕を下ろすことができました。
「正チャンの冒険」は 人気が人気を呼び→
山村千鳥一座はお芝居を続けられることになりました。
そして…。
「今回が初舞台の新人女優→
荒削りだが見どころあり」。
千代ちゃんのこっちゃ。すっごいぜ 千代ちゃん。
(宮元)赤の他人が評価してくれはる
っていうんは→
大女優さんへの第一歩やな。
あの 電話使ても よろしおますか?
1分だけやで。
おおきに。
[TEL]
(シズ)ほな それで 頼みましたで。へえ 毎度 おおきに。
[TEL]
はい。
千代!?
(宗助)今 千代って言うたか!?
(みつえ)千代やの?
(富士子)千代やて?
ご無沙汰しております。
あんた 今 どこで何してますのや。
役者? 新聞?
千代 元気か?何で もっと はよ連絡よこさへんねんな!
あかん もう時間や。
皆さんに よろしゅう。 ほな また。
切れてしもた…。